就職や転職に限らず、相手の企業に書類を送る場合には書類送付状(添え状)を添付します。
これを「送り状」と言うのは間違いです。一般事務職で「送り状」と言えば宅配便で宛先などを記入する配送伝票のことをいい、貿易事務では貨物明細書(インボイス)のことを指します。事務職の人が書類送付状のことを送り状と言うことはないので、特に事務職志望の人は注意したほうが良いです。
ところで、就職活動や転職活動の場合はご挨拶の意味も含まれるので、正しいビジネス文書のルールに則った送付状を作成すべきです。しかし、あまり大きな声では言えませんが、受け取った側は送付状をすぐに捨ててしまうことが多いので、あまり気合を入れて作るものではありません。自分用のテンプレートを1つ作っておいて、使いまわしをすればよいです。
そこで、いつでもプリントアウトができるように、自分だけの送付状のテンプレートを作成してみましょう。
目次
1.送付状とは何か
(1)書類を送る時の挨拶状のことです
送付状は、カバーレターcover letterともいい、レポートの表紙のようなものです。
学生の就職の場合は、送付状と履歴書を送付します。そのほか、成績証明書、卒業見込証明書、エントリーシートなどの提出が必要な場合はそれらも同封します。社会人の転職の場合は、送付状を一番上にして、履歴書、職務経歴書と、ハローワークの場合は紹介状のハガキをセットにして送付します。
いずれにしても送付状が必要です。
(2)署名捺印
基本的に送付状に印鑑を押さなければならないというルールはありません。しかし、重要なビジネス文書の場合、会社のハンコ(社判)や代表取締役の印鑑を押すことが多いので、送付状には署名捺印をするのが無難だと思います。なお、印鑑を押す場合は、認印(=100均で買える安い印鑑のこと、シャチハタは不可)でよいです。
(3)送付状は必ずWordで作ること
送付状はA4用紙、縦向き1枚で、必ずパソコンで作ります。
パソコン初心者に配慮して「手書きで作ってもよい」などと言ってくれる優しい企業もあるみたいですが、いまどき送付状を手書きで作る人はいません。パソコンで送付状が作れない面倒な人間を雇って、企業側に何のメリットがあるのでしょうか??Word3級レベルで作れますから、サクッと作ってしまいましょう。
2.ページ設定
問題
A4縦、30行でWordの新規文書を作成しなさい。
解説
ビジネス文書作成では最初にページ設定をします(参考:【Wordページ設定】用紙と文字数の設定方法とフォントの親子関係について)。しかし、そんなに設定を変える場所はありません。そんなに長い文章を打つわけではないので、行数を減らすだけでよいです。
3.日付から挨拶文まで
問題
次のWord文書を作りなさい。
解説
(1)キーボード入力
実際に入力してみましょう。入力する順番は次の通りです。
- 日付
- 応募先企業
- 氏名(自署する場合は不要)
- タイトル
- 挨拶文
すべて左詰めで入力します。大事なことなのでもう一度言います。キーボード入力は全部左詰めです。文字を大きくしたり、フォントを変えたりしてはいけません。一気に前文まで入力します(参考:【ベタ打ち10か条】Wordの文字入力は絶対にマウスを持ってはいけない)。
もし、誤ってインデントやスペースを入れてしまった場合は、書式のクリアをします。
名前の部分を、自署(署名捺印)する場合は1~2行程度あけます。
タイトルの上下は1行あけます。また、拝啓の後には必ず全角スペースを入れます。
拝啓で始まり敬具で終わります。Wordは「拝啓」で始まる挨拶文を入力すると、勝手に「敬具」が挿入されるおせっかいな機能があります。
点滅のカーソルを左端に置きます。ここから本文を入力します。
(2)各項目の注意事項
- 日付(右)、相手(左)、自分(右)、タイトル(中央)、本文(左)の順番は、事務職に限らず、ビジネス文書の大原則なので必ず覚えましょう。
- 日付は、西暦にするか和暦にするかは履歴書に合わせます。郵送する場合は発送日で、持参する場合は持参日です。履歴書と職務経歴書も同じ日付にします。
- 応募先企業の名称は、その企業の公式ホームページの会社概要に書いてある正式な会社名(※商業登記簿上の名称)を記載し、カッコ書きや略称を使わないようにします。次の行に「採用ご担当者様」「人事部 XXXX 様」などとします。
- 送付状の使いまわしをするのであれば、「~~の侯」のような季節の言葉を入れず、無難な挨拶文にしておいたほうがよいです。
(3)書式設定
挨拶文まで入力したら最初に戻って書式設定をします。日付を右揃えにします。
自分の名前やメールアドレス、電話番号を入れて複数行にした場合は必ずすべて選択します。
「右揃え」にするか「左揃え左インデントの右寄せ」にするかは自由です。右揃えにすると右側が揃います。
左揃えのまま左インデントの設定(20~25字程度で調整)にすると、左側が揃ったまま右寄せになります(参考:【Word】中央揃えやインデントは余白を設定する「見えない書式」である)。
タイトルを中央揃えにして、文字を大きくします。
これで完成です。
なお、文字を横長にするのは間違いです。
罫線や装飾、イラストを入れるのも間違いです。単にフォントサイズを大きくするだけで良いです。
拝啓の前にスペースを入れてはいけません。必ず左詰めにします。
4.応募のきっかけ
問題
さらに、次の文章を入力しなさい。
解説
本文の先頭にスペースを入れることが多いです。応募のきっかけは、ハローワークの場合は「ハローワークにて貴社の採用情報を拝見し」となります。なお、説明会に参加した場合はその前にお礼を書きます。
ちなみに「下記」というのは、下に書く「記」のことです。
5.自己PRは絶対に書いてはいけない
問題
インターネット上でたまに、「添え状に長々と自己PRを書いて気持ちを伝えたほうが良い」などと意味不明なアドバイスをしているものが見られます。とんでもないマナー違反です。
応募書類は、不特定多数に送り付けるダイレクトメールとは異なり、企業の求人に対して応募する(参加の意思を示す)ために送付するものです。それに添付する送付状は、あくまで連絡のための書類です。
お忙しい中、書類に目を通していただき事務処理をお願いするとともに、お手数をおかけするのをお詫びする意味も含まれる文書ですから、電話で用件を伝えるのと同じように、手短かに用件を述べたら良いのです。迷惑をかえりみず、下手くそな感想文を送り付けるのは失礼以外の何物でもありません。
PRがしたければ、別途「自己PR書」を作るべきです。
6.お願いするのがメインです
問題
次の文章を入力しなさい。
解説
送付状で最も重要な用件は「書類を見ていただくこと」と「面接の時間を取っていただくこと」です。面接ではなく筆記試験の場合は「選考の機会をいただけますよう~」となります。
7.記書き
問題
次の文章を入力しなさい。
解説
本文の中に「下記」と書いたら、「敬具」のあとに「記」を書いて「以上」で終わるのが決まりです。これを「記書き」といいます。Wordの場合、「記」を打ってEnterキーを押すと、勝手に「以上」が入るおせっかいな機能があります。
履歴書しかない場合は、「履歴書 1通」で中央揃えをしたらよいです。
2種類以上の文書がある場合は、左詰めで入力します。
中央に寄せる場合は、中央揃えではなく、「左インデント」をおすすめします。ただし、リスト形式の箇条書きなので、ど真ん中にする必要はありません。
ちなみに、履歴書や職務経歴書は2枚でも1通です(この場合は、1通と書くよりも「2枚」と書いたほうがいいかもしれません)。
8.さいごに
(1)複数個所に保存しておく
せっかく作った応募書類が消えたら大変です。パソコン、メモリなど2か所以上に保存しておきます。そして、コピーして応募企業ごとに送付状を作るようにします。
(2)折り目を付けてはいけない
履歴書はA4より小さくなることはありません。また、透明なクリアファイルに入れて提出します。したがって、送付状を折り曲げることは絶対にありません。また、端が折れ曲がったり、汚れがつかないように注意します。
解説は以上です。