Excelの数式の最初の難関は、絶対参照です。絶対参照とは数式をコピーしても参照するセルを変えない(固定する)ことです。絶対参照を理解するには「相対参照が原則で、絶対参照が例外である」ということを理解しなければなりません(後述)。
相対参照のメリットはオートフィル(コピー)によって多くの計算結果を得ることができるということです。縦または横に並んでいる数値を使って一気に計算できますから、とっても便利です。相対参照は便利な機能なのです!! しかし、例外として、数式の一部を固定したい場合、固定するということを指示しなければなりません。
そこで、今回は、表の形とコピーの状況を見て、絶対参照の必要性を判断する練習問題を出題します。
目次
問題文のあとに簡単な操作方法を解説していますが、静止画では、わかりにくいと思いますので、最後に動画を載せています。ぜひご覧ください。
- 1.絶対参照の「固定」とは何か
- 2.1か所しかなければ固定
- 3.絶対参照を考える手順
- 4.構成比率=個別÷全体
- 5.何を固定するかは表の作り方による
- 6.計算結果を予測する練習
- 7.表の形を見て絶対参照の判断をする練習
- 8.動画版はこちら(無料)
1.絶対参照の「固定」とは何か
問題
次の6つの計算をしなさい。また、「0.15」の部分を「0.24」に変更して再度計算しなさい。
「23x0.15」「810x0.15」「1200x0.15」「999x0.15」「13650x0.15」「5.5x0.15」
解説
相対参照の場合、12個の数を入力して掛け算をします。
この計算は、A列にある数値をすべて0.15倍するだけなので、0.15を6個入力するのが無駄です。0.15は1か所だけに固定して、0.15倍できるのが理想です。
しかし、このまま0.15を消すと、答えが0になります。
相対参照の影響で、計算式に使われている参照セルが1個ずつ下にずれていくからです。
この緑の枠を動かさないようにすればよいということになります。
そこで、最初の計算式を修正します。B1のところをクリックしてカーソルを置きます。
この状態でF4キーを1回押します。ドルマーク($)がつきます。これは固定を表します。
確定して、オートフィルします。これで正しい答えが出ます。
計算式を見ると、ドルマーク($)で固定したものはB1のままです。
このように、相対参照の影響を受けないようにドルマーク($)を付けて固定をすることを絶対参照といいます。コピーをしても参照するセルは動きません。
計算式で共通の値があるときは、入力が1回で済むように考え、かならず絶対参照を使います。
0.15を0.24に変えます。連動してすべて0.24倍になります。
2.1か所しかなければ固定
問題
3つの店舗A,B,Cの売上目標がそれぞれ50,000円で、売上が46,000円、51,500円、60,000円であった。目標達成率をパーセンテージで表しなさい。
解説
まずは、与えられたデータを入力します。これを用いて計算します。達成率は、目標から見てそれよりも多いか少ないかを知るために計算します。目標より多ければ目標達成、少なければ残念ということです。
目標で割ると計算できます。
この場合、実績を目標で割る計算式を入力します。ここで、実績の数値は3つありますが、目標の数値は1つ(共通)であることに注意します。
確定する前に絶対参照が必要かを確認します。絶対参照が必要かどうかは、オートフィルをした時のことを前提に考えます。オートフィルをしたときに、青と緑の枠も同時に下に動いていいかどうかを考えます。
実績は各店舗によって異なりますので相対参照でかまいませんが、目標は1か所しかありませんので固定する必要があります。
F4キーで固定します。
オートフィルします。
パーセントスタイルにします。これで完成です。92%はノルマを達成できなかったことを表し、100%を超えているものは目標をクリアしたことを表します。
計算式を確認すると緑の枠は動きません。
このパーセンテージから100%にあたる1を引くとプラスマイナスがわかりやすいという考え方もあります。
しかし、がんばって目標を達成したにもかかわらず、ゼロと評価されてしまう欠点があります。
別解
今度は、横向きに入力しても練習してみましょう。
計算式を入力するときにオートフィルをした時の影響を考えます。B2は右にシフトしなければいけませんが、A2は固定しなければいけません。
A2にはドルマーク($)が必要です。
オートフィルをします。パーセントスタイルにします。これで完成です。
3.絶対参照を考える手順
問題
次の表で、1ドル=110円として、ドルを円に換算しなさい。また、1ドル=105円として再度計算しなさい。
解説
1ドルを110倍すると110になり、円になります。逆に110円を110で割ると1になり、ドルになります。このことからドルを円にするときは110倍、逆に円をドルにするときは110で割ります。
まず、換算レートである110を入力しておきます。
計算式を入力します。110倍です。ここで絶対参照を考えます。
オートフィルやコピーを前提として計算式を入力するときは必ず絶対参照を考えます。このときオートフィルの方向を考え、計算式に使っているセルも同じ方向に動くかどうかを考えます。
今回の場合、オートフィルは右方向です。
掛け算に使用するセルは2つですが、110は右に動いてはいけないものです。絶対参照です。
オートフィルします。これで完成です。
オートフィルをしたときは最後のセルの計算式を確認して、正しい式になっていることを確認します。
105円に変更します。
4.構成比率=個別÷全体
問題
7月の売上が22500円、8月が23000円、9月が24000円だった。3か月の合計を計算し、7月の売上がそのうちの約何%を占めているか求めなさい。
解説
7月から9月までの売り上げを入れます。入力は縦方向でも横方向でも構いません。
3つを足して合計を出します(SUMでもよい)。69500円です。
そのうち7月の売上が何%を占めているかを求めます。全体の何%に当たるかを表す比率を構成比率ということがあります。合計を分母にすることで計算できます。7月の売上を全体で割ります。
7月だけの比率を出すだけであれば絶対参照は不要ですが、8月9月も比率を出すのであれば、絶対参照を考えます。
オートフィルの方向は下です。
これにあわせて売り上げは下に下がりますが、合計の位置は固定です。
これで完成です。
5.何を固定するかは表の作り方による
問題
定価を割引した時の販売価格を計算できる表をできるだけ多く作りなさい。
割引率を固定する場合
回答例として2つの表を解説します。
指定されたパーセンテージだけ増やすことを割増、減らすことを割引といいます。
100%に比率を足せば割増、引けば割引になります。
1つ目は割引率のセルを1箇所にしたパターンです。計算式を入力します。
割引率の場所は1箇所で固定なので絶対参照です。
これで完成です。
割引率を変えることによっていろいろな割引が計算できます。
定価を固定する場合
次に元の価格のセルを1箇所にしたパターンです。計算式を入力します。今度は元の価格が1箇所なのでこれが絶対参照です。
これで完成です。
元の価格を変えることによっていろいろな割引率を計算できます。
6.計算結果を予測する練習
問題
次の表で、5つの計算式をそれぞれ下向きにオートフィルをした時の計算結果がどうなるか述べなさい。
解説
A1+A1は両方とも相対参照です。これをオートフィルするとA1はA2,A3と動きます。
したがって、A列の値の2倍になります。
一方だけドルマーク($)がついている場合、A1のまま動きません。
つまり、1+1、1+2、1+3となります。したがって、A列の値に1加えた数になります。
両方ともドルマーク($)がついている場合は、オートフィルをしてもA1のまま変わりません。
したがって、すべて2になります。
A1とA2をたすと3です。これが1個ずつ下にずれますから、2+3、3+4、4+5となります。
したがって、3から順に奇数が並びます。
A1にドルマーク($)がついているので、1のまま固定となります。
したがって、C列と同じになります。
7.表の形を見て絶対参照の判断をする練習
(1)練習問題
問題
次の図で、左の表(1~10)を11倍した結果を、太枠で囲まれた部分に求めようとしている。左上は1*11、右下は10*11である。左上の計算式について、絶対参照が必要か、理由を付けて述べなさい。
解説
入力した計算式を、別のセルにオートフィルまたはコピーする可能性がある場合、絶対参照を考える必要があります。
オートフィルまたはコピーする方向と連動して、計算の対象も動いてよいかどうかが判断基準です。
数値が1つだけ入力されているということは、それぞれの計算式で共通で使用することは明らかです。動いてはいけない場合は絶対参照です。
1番と11番をかけます。縦と横にオートフィルをする予定です。
1~10番は縦と横に動くものですが、11番は1か所しかないため、固定すべきです。
したがって、11は絶対参照になります。
オートフィルをします。これですべて11倍になります。
(2)特訓問題
問題
さきほどの問題と同じ要領で、太枠の左上にある計算式について絶対参照が必要か、理由を付けて述べなさい。
設問1
設問2
設問3
設問4
設問5
設問6
設問1
1と6をかけます。1~5と、太枠は同じ大きさです。これは相対参照です。
6は1か所しかないので絶対参照です。下向きにオートフィルをしても6より下に数値はありません。
設問2
1,6,7,12をかけます。1~5、7~11と、太枠は同じ大きさです。これは相対参照です。
6と12は下に何もありません。したがって6と12は絶対参照です。
設問3
1と2と12をかけます。2~11、12~21と、太枠は同じ大きさです。これは相対参照です。
1はその下が空いているので絶対参照です。
設問4
1と2と7をかけます。2~6と太枠が同じ大きさです。
1と7は絶対参照です。
設問5
1と16と17をかけます。右向きにコピーをします。
このとき右に、16と17に相当するものがないので、この2つは絶対参照です。
設問6
1と11をかけます。
横向きにオートフィルをするとともに縦向きにコピーをしますが、11は右にも下にも、それに続くものがないので絶対参照です。
解説は以上です。
8.動画版はこちら(無料)
この記事は、わえなび実力養成講座「ファンダメンタルExcel」Program 5-6、5-7、「Excel新演習3」Program 3-1 の3本のYoutube動画を書き起こしたものです。
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