セルの参照方法には相対参照のほか、絶対参照と複合参照があります。Excelで計算するときには必ずこれらの参照方法をマスターしなければなりません。しかし、行固定または列固定のドルマーク($)をどこに付けたらいいのか迷ってしまいます。
計算の対象となっている数値が縦に並んでいる場合は列固定でその列番号にドルマークをつけます。横に並んでいる場合は行固定でその行番号にドルマークをつけます。このように理解すればよいですが、数式をコピーする方向によってドルマークの有無が変わってきます。
そこで、今回は、複合参照を使った応用問題を出題しますので、1問ずつしっかりと理由を説明できるようにしましょう。
目次
問題文のあとに簡単な操作方法を解説していますが、静止画では、わかりにくいと思いますので、最後に動画を載せています。ぜひご覧ください。
- 1.相対参照と絶対参照
- 2.複合参照(行固定)
- 3.複合参照(列固定)
- 4.かけざん九九の表
- 5.行固定・列固定で$を付ける場所
- 6.表の形から列または行固定を判断する練習問題
- 7.応用問題
- 8.動画版はこちら(無料)
1.相対参照と絶対参照
相対参照と絶対参照についてはそれぞれ、こちらの記事をご覧ください。
- 【Excel数式】セルの「参照」が分からなければ相対参照は理解できない - わえなび ワード&エクセル問題集
- 【Excel】絶対参照は表の形とコピーの有無で判断できるように練習せよ - わえなび ワード&エクセル問題集
2.複合参照(行固定)
問題
9教科のうち、5教科を2倍、4教科を3.5倍しなさい。
解説
掛け算を入力します。右にオートフィルをするときは、倍率と評定は連動するので相対参照です。
正しい答えが出ます。
今度は下にオートフィルします。この場合は倍率の方を固定する必要があります。
絶対参照にすればうまくいきます。
絶対参照はドルマーク($)が2つつきます。これは行番号も列番号も固定することを表しています。
計算式は縦と横にオートフィルをするのに対して、倍率は横方向にだけ入力してあります。
このとき行番号だけ固定します。
F4キーを何回か押すことで切り替えができます。「B$2」とします。
オートフィルをします。今度はうまくいきました。
絶対参照のうち行列の一方だけ固定することを「複合参照」といいます。
計算式は縦と横にオートフィルをするのに対して、参照するセルが横に並んでいる場合、行の固定が必要です。
固定が必要な行を見るとその行番号は「2」になっています。このとき、「2」だけドルマーク($)をつけます(B$2)。
3.複合参照(列固定)
問題
Yes/Noで答える10個の質問のアンケートをしたところ、次のような回答者数になった。
Yes/Noの合計とそれぞれの比率を求めなさい。
解説
まずは足し算をします。これは相対参照です。
つぎに構成比率を出します。比率は内訳/合計です。
このとき下向きにオートフィルをするだけであればこれで問題ありませんが、右にオートフィルをするときには、合計を固定する必要があります。
計算式は縦と横にオートフィルをするのに対して、合計は縦方向だけです。このとき列番号だけ固定します。
固定が必要な列を見ると、その列番号はDです。このときDだけドルマーク($)を付けます。
オートフィルをします。
これで完成です。
4.かけざん九九の表
問題
かけざん九九の表を完成させなさい。
解説
最初に計算式を入れてから考えます。
計算式は縦と横にオートフィルをするのに対して、A列は縦だけ、1行目は横だけです。右にオートフィルをするときには左の列を固定する必要があります。下向きにオートフィルをするときには上の行を固定する必要があります。このように縦に並んだセルと、横に並んだセルを使って計算する場合、それぞれ固定を考えます。
縦に並んだセルはA列にあります。したがってAの前にドルマーク($)を付けます。
横に並んだセルは1行目にあります。したがって1の前にもドルマーク($)を付けます。それぞれF4キーでドルマーク($)をつけます。
オートフィルをします。これで完成です。
5.行固定・列固定で$を付ける場所
問題
税抜価格に消費税を加算して税込価格を求めなさい。なお、税率は3%、5%、8%、10%、15%とする。
解説
まずは計算式を入力します。税抜価格の割増です。
計算式は縦と横にオートフィルをしますが、税抜価格はB列、税率は2行目で固定です。
ドルマーク($)を付ける場所は、計算するセル(参照するセル)が縦に並んでいるか横に並んでいるかによって見方が変わります。縦に並んでいる場合はその上を見て列番号に$をつけます。また、横に並んでいる場合はその左側を見て行番号に$を付けます。
税抜価格のBと、税率の2を固定します。
オートフィルします。これで完成です。
6.表の形から列または行固定を判断する練習問題
(1)例題
問題
次の図で、左の2つの表(1~5と6~20)を用いて、太枠の部分に掛け算の結果を求めようとしている。左上は1*6、右下は5*20である。左上の計算式について、列固定または行固定が必要か、理由を付けて述べなさい。
解説
列固定または行固定が必要かを考えるにはまず、計算式をオートフィルする方向を考えます。縦と横の両方であれば複合参照の可能性があります。そして、その方向に、参照セルも連動してもよいかどうかを考えます。この図の場合、計算式の方向は右と下です。縦と横の両方にオートフィルをします。
1~5は縦に数字が並んでいます。列固定が必要です。
6~15のほうは縦横に動いて問題ありません。つまり、相対参照でかまいません。
1と6をかけます。このとき、1~5が縦並びであることから、その列番号を見ます。
Aにドルマーク($)を付けます。
オートフィルします。これで完成です。
右下が5x20になっていることを確認します。
(2)特訓問題
問題
さきほどの問題と同じ要領で、太枠の左上にある計算式について、列固定または行固定が必要か述べなさい。
設問1
設問2
設問3
設問4
設問5
設問6
設問7
設問8
設問9
設問10
設問1
1と16をかけます。
1~15は5x3の表であるのに対して、16~20は縦だけです。16のほうは列固定が必要です。
必ず、右下の計算式が合っていることを確認します。
設問2
1と6をかけます。
1~5は横に並んでいます。1のほうは行固定が必要です。
設問3
1と16をかけます。
16~20は横方向だけです。16は行固定が必要です。
設問4
1と6をかけます。1~5は縦だけ、6~10は横だけです。1は列固定、6は行固定が必要です。
設問5
1と6と11をかけます。設問4と同じように、1は列固定、6は行固定が必要です。
さらに11は縦にも横にも並んでいない、1か所しかないセルです。これは絶対参照です。
設問6
1と6と11と16と21をかけます。
1~5と、6~10は縦に並んでいます。11~15、16~20は横に並んでいます。1と6は列固定、11と16は行固定です。
さらに21は絶対参照です。
設問7
1と16と17と18をかけます。1~15で考えれば、相対参照です。
計算式は右に3つオートフィルをするのに対して、16と17の右側に数字がありません。16と17は絶対参照です。
18~20は横並びなので、18は行固定です。
設問8
1と6と16をかけます。
1は縦並びで列固定、6は相対参照、16は絶対参照です。
設問9
1と6と16をかけます。計算式のオートフィルは縦方向だけのように見えますが、右側も同じ計算式を利用することを考えれば、縦と横方向にコピーをするものと考えられます。
1は縦並びで列固定です。
6~10は縦並びですが、右にコピーをして11~15も利用することを考えれば相対参照です。
16については、右にコピーしたときに17になると考えられるので、行固定が良いです。
設問10
1と6と16をかけます。先ほどの問題と同じように、少し飛んでいますが縦横にコピーをするものと考えます。
1~5は横並びで行固定、16と17は縦並びで列固定です。
6~10は、下にコピーして11~15を利用することを考えれば相対参照です。
コピーをして完成です。
7.応用問題
(1)規則的に数を並べる
問題
次の表を、複合参照を使って作りなさい。なお、完成イメージのデータ以外に、入力するデータがあっても構わない。
解説
規則的に並んでいる表の場合、複合参照を使えば、すぐにできる場合があります。この表の場合、4桁の数字ですが最初の2桁と最後の1ケタは連番です(参考:【Excel】計算式で数列を求めることによって規則的にデータを並べる練習)。
縦に19~21、横に1~5を入力します。1901は19*100+1です。
複合参照にします(A列と1行目固定)。
オートフィルをします。これで完成です。
4桁の部分だけ使いたいときには、コピーをして、値で貼り付ければどこでも使うことができます。
(2)列固定*列固定*行固定
問題
A列に定価、B列に割引率、2行目に個数を入力した。定価*個数を、割引をした金額を求めなさい。
解説
割引率の分だけ減らす計算をします。定価x個数x(1-割引率)です。
複合参照にします。
オートフィルをします。これで完成です。
(3)文字列連結と複合参照
問題
複合参照を使って次の表を作りなさい。なお、完成イメージのデータ以外に、入力するデータがあっても構わない。
解説
ハイフンの前は縦向きにアルファベットが並んでいます。
ハイフンの後は横向きに並んでいます。これを連結します。
まず、縦向きにAからFまで入力します。これをコピーします。
貼り付けるときに、行列を入れ替えて貼り付けます。横向きになります。
AとAをハイフンで連結します(参考:【Excel】文字列結合、スペース・改行・ダブルクォーテーションの連結)。
複合参照にします。
オートフィルをします。これで完成です。
別解
ここでハイフンを別のセルに入力したとします。この場合、最初の計算式は3つのセルを連結することになります。
複合参照ですが、ハイフンは絶対参照です。
オートフィルをします。これで完成です。
これで、ハイフンを別の文字に変えることもできます。
(4)ローマ字表
問題
複合参照を使って次の表を作りなさい。なお、完成イメージのデータ以外に、入力するデータがあっても構わない。
解説
かっこ書きの部分はイレギュラーなので後で考えます。
A列と1行目にアルファベットを入力します。これを連結します。
複合参照にします。
オートフィルをします。
A列と1行目を別の場所にコピーします。かっこ書きの部分だけ入力します。
この左と右の表を連結します。元の計算式を修正して、右の表をさらに連結しますが、これは相対参照になります。
オートフィルをします。これで完成です。
(5)2つの変数
問題
いま、ある競技で47都道府県の代表チームがすでに決定している。全国大会を行う前に、東日本17チームと西日本30チームに分けて、それぞれ東日本予選、西日本予選を行うことになった。予選通過できる確率を、東西でできるだけ等しくしたい。東西それぞれ何チームを予選通過とすればよいか。
解説
例えば、東日本から2チーム選ばれるのであれば、選ばれる確率は17分の2です。西日本から4チーム選ばれるのであれば、30分の4です。東日本と西日本で不公平にならないように、この確率の差を少なくしようとしています。そこで、17分の1~17分の17、30分の1~30分の30を求めて、その差を計算します。
縦と横に数字を入力します。
17分の1から30分の1を引きます。
複合参照にします。
オートフィルをします。これで最も0に近い組み合わせが正解ですが、とても見にくいです。
そこで初めの計算式を修正して1000倍します。
整数の表示にします。2が一番0に近いです。東日本から4チーム、西日本から7チーム選べば、誤差が1000分の2で最も公平になります。
このとき予選落ちが13チームと23チームになります。
予選通過と予選落ちを逆にしても、誤差は同じです。よって、最適解は(4,7)、(13,23)となります。
解説は以上です。
8.動画版はこちら(無料)
この記事は、わえなび実力養成講座「ファンダメンタルExcel」Program 5-8、「Excel新演習3」Program 3-2、3-3 の3本のYoutube動画を書き起こしたものです。
- ファンダメンタルExcel 5-8 絶対参照3(行固定・列固定)【わえなび】 (ファンダメンタルExcel Program5 計算式の入力) - YouTube
- Excel新演習3数式・計算式集中講義 3-2 複合参照の確認テスト1【わえなび】 - YouTube
- Excel新演習3数式・計算式集中講義 3-3 複合参照の確認テスト2【わえなび】 - YouTube