Excelで引数(ひきすう)とは、Excel関数を呼び出すときにそれと同時に渡す値のことで、それぞれの関数によって引数の種類や個数が決まっています。 また、渡す引数によって戻り値が異なります(参考:Excel関数が苦手なら、関数名の変更と戻り値を最初に練習すべきである)。引数の渡し方を間違えた場合はエラーになります。
ところで、Excel関数の引数は、その関数の計算をするのに不可欠な条件であって、関数の計算の内容や戻り値の計算の仕方が理解できていれば、どのような引数が必要なのかが分かるはずです。
そこで、今回は、Excel関数の引数について詳しく解説します。
目次
問題文のあとに簡単な操作方法を解説していますが、静止画では、わかりにくいと思いますので、最後に動画を載せています。ぜひご覧ください。
- 1.必須の引数と省略可能な引数
- 2.引数の個数を数える
- 3.知らない関数の引数の個数
- 4.引数の無い関数はなぜ引数が無いのか
- 5.セル範囲の参照
- 6.エラー値#REF!
- 7.範囲の絶対参照
- 8.行列の挿入と削除
- 9.引数の範囲の注意点
- 10.動画版はこちら(無料)
1.必須の引数と省略可能な引数
問題
SUM関数を挿入すると、次のようなヒントが表示されることがある。この意味を説明しなさい。
解説
関数名と同時に伝える条件のことを、引数(ひきすう)といいます。引数が2個以上ある場合には、半角のカンマで区切って指定します。
1つ目の引数を第1引数といい、順に、第2引数、第3引数といいます。
関数を挿入するとどのような引数が指定できるのかが表示されます。
このヒントを参考にして引数を指定します。SUM関数は、第2引数のあとに「・・・」があります。
カンマで区切って30個まで指定することができます。
2つ目の引数に角括弧がついています。これは、2つ目以降の引数は省略してもよい、ということを表しています。1つ目の引数には角かっこがないので、省略できないことを表します。
したがって、SUM関数は引数が必ず1つは必要です。引数が無いのはエラーです。
2つ目以降は任意です。
引数を指定しなければ「この数式には問題があります」というエラーが表示されます。
エラーが出たらキャンセルしてやり直します。
このように、引数には、省略できない必須の引数と、省略可能な引数があります。原則として、引数は省略できませんが、省略可能な引数は、角括弧[ ]をつけて表します。
2.引数の個数を数える
問題
次の数式の引数は何個か。
- =MAX(B1,0)
解説
実際に数式を入力します。MAX関数を入力します。
引数を増やすときには、半角のカンマを入力します。
この数式は、0より小さい、マイナスの値を強制的に0にする数式です(参考:【Excel関数】最大なのに下限のMAX、最小なのに上限のMIN)。
カンマで区切られていますので、引数は2個です。
このようにクリックすると、第1引数と第2引数をそれぞれ選択することができます。太字になります。引数が2つあることがわかります。
3.知らない関数の引数の個数
問題
IF関数の引数は何個か。
解説
例えば、コーヒーの注文に砂糖とミルクをつけることはありますが、カレーの注文に砂糖とミルクをつけることはありません。
Excelにはたくさんの関数がありますが、これらの関数は、指定できる引数の種類や個数が異なります
関数を使うときには、指定できる引数を調べる必要があります。
イコールのあとに関数名、さらに、カッコを入力するとヒントが表示されます。
かっこの中か、関数名のところにカーソルがあれば表示されます。
IF関数の引数は原則として、3個です。4個以上はありません。
3つのうち、第2引数と第3引数は省略可能です。
4.引数の無い関数はなぜ引数が無いのか
問題
TODAY関数に引数がないのはなぜか。また、引数を指定するとどうなるか。
解説
[fx]関数の挿入のボタンを押します。
TODAYを探します。
引数を指定する画面は出てきますが、「この関数には引数は必要ありません」と表示されます。
現在の日付になります。
セルには実際に今日の日付が入りますが、数式バーにはTODAYが入っていて、引数がありません。
引数というのは、関数を呼び出すときの条件で、引数が変われば計算結果が変わります。
しかし、今日の日付を求めるTODAYのように、引数がなくても自動的に答えが出る計算は、引数を指定する意味がありません。
引数によって答えが変わることのない関数は、引数を指定することができません。引数がなくても、関数を呼び出すためのカッコは必要です。
TODAY()のほかに、今日の日付と現在の時刻を求めるNOW()、円周率のPI()も引数はありません。
引数を指定してはいけませんので、引数を指定するとエラーになります。
このように、引数の個数を間違えるとエラーになりますので、キャンセルで取り消します。
5.セル範囲の参照
問題
次の図で、セルD2の数式の意味を説明しなさい。また、この数式を入力する練習をしなさい。
解説
SUM関数の中にカンマが1つだけあります。これは引数が2個であることを表しています。
第1引数は同じシートにあるB2:B6です。第2引数はSheet2のC2:C6です。2か所のセル範囲の合計を求めています。
このように、別のシートを参照することもできます。
それでは実際に入力してみましょう。オートSUMボタンで、B2:B6を選択します。
半角のカンマを入力します。
Sheet2にして、C2:C6を選択します。
Enterキーで確定します。これで完成です。
6.エラー値#REF!
問題
次の表で、B列~E列を削除したところエラーになった。エラーの原因を述べたうえで、エラーにならないようにする方法を述べなさい。
解説
F列で最高点を求めるためMAX関数を使っています。
B~E列を削除します。
「#REF!」と表示されます。引数も「#REF!」になります。
「#REF!」はリファレンス(Reference)、つまり、参照していたセル範囲が無くなったことを表します。
引数でセルの参照をしている場合、そのセルを削除するとエラーになります。セルを削除するときには、ほかのセルに入力されている関数にエラーが出ていないかを必ず確認します。
この場合は、列を非表示にします。非表示の場合はエラーになりません。
引数で、非表示のセルを参照することができます。
別解
数式をコピーして同じ場所に値の貼り付けをすると、数式が消えます(参考:【Excel】コピーをして値の貼り付けや演算貼り付けによって計算式を消す)。
数式を無くしてから、列を削除すればエラーになりません。
7.範囲の絶対参照
(1)相対参照と絶対参照
問題
次の図で、B2:B6の合計を求めて下向きにオートフィルをするとどのような計算結果になるか。また、絶対参照「$B$2:$B$6」にした場合はどうか。
解説
B2:B6の合計を求めます。
オートフィルをします。
相対参照により引数のセル範囲も下にずれていきます。このように相対参照の場合、オートフィルをすると、入力していないセルが引数の対象となる場合があります(参考:【Excel数式】セルの「参照」が分からなければ相対参照は理解できない)。
この範囲を絶対参照にします(参考:【Excel】絶対参照は表の形とコピーの有無で判断できるように練習せよ)。[F4]キーを使います。
絶対参照にすると、オートフィルをしても範囲は変わりませんので、ずっと15のままです。
(2)オートフィルの結果がおかしい場合は絶対参照を疑え!
問題
この表は、ある駅伝の各区間の距離と累計構成比率を求めたものです。例えば、1~5区は全体の49.5%にあたります。
7区の人が走りおわった段階で全体の68.9%を走ったことになります。10区で100%となります。
この比率をSUM関数を用いて求めようとしましたが、オートフィルをすると明らかに誤っています。正しい数式に直しなさい。
解説
SUM関数を用いて計算しています。初めの9.8%は正しいですが、オートフィルをすると間違った答えになります。
1区から9区まで走って50%というのは明らかに不自然です。
特に、初めの数値が正しいにもかかわらず、2つ目以降の数値が誤りの場合は、絶対参照の指定が間違っています。
オートフィルをしたときは、途中のセルをダブルクリックします。引数となっているセルの範囲を見て、ずれていないかを確認します。
1区から10区までの合計を求めている部分がずれています。
このようにセル範囲を引数とする関数を使った場合で、オートフィルをしたときは、必ずダブルクリックによって引数の範囲を表示してずれていないかを確認します。
絶対参照にします。
オートフィルをします。10区が100%にならないのは明らかに間違っています。
10区は100%になるはずなので、分母と分子の範囲(引数の範囲)が同じになります。引数の初めがB2になっていないのがおかしいです。
はじめのB2だけ絶対参照にします。
オートフィルをします。これで完成です。
8.行列の挿入と削除
(1)行列の挿入
問題
次の図のように、SUM関数を用いてセルB2:F2の合計を求めた。
列を挿入した時に引数は変化するか、実際に操作して確認しなさい。
解説
B列の左に1列挿入します。
引数は1列ずれてC2:G2となります。
今度は、G列の左に1列挿入します。
引数はそのままです。
引数となっているセル範囲の左端に1列挿入すると、引数のセル範囲は1列ずれます。
また、右端に1列挿入すると、引数は変わりません。
右端に挿入しても、左端に挿入しても、挿入したセルは引数の範囲外で、合計の対象外です。
これは上下に行を挿入した場合も同じです。
C列の左に1列挿入します。
引数のセル範囲は1列増えてB2:G2となります。
引数となっているセル範囲の内部で1列挿入すると、引数のセル範囲は1列分増えます。
内部に行または列を挿入すると合計の対象となります。
(2)行列の削除
問題
列を削除した時に引数は変化するか、実際に操作して確認しなさい。
解説
B列を削除します。
引数は1列減ります。
引数の対象となっている列を削除すると、その分、引数のセル範囲が減ります。
ちなみに、全部削除するとエラーになります。
(3)絶対参照は絶対ではない
問題
引数を絶対参照にした場合はどうか。
解説
引数を選択します。絶対参照にします。
内部に列を挿入すると、1列増えてB2:G2となります。
列を削除すると、引数も変化します。
行や列を挿入または削除すると引数が変化しますが、絶対参照にしたからといって引数が固定されるわけではありません。
絶対参照で固定すると、数式をコピーまたは移動しても引数は変わりません。
絶対参照で固定されるのは、コピーや移動だけであって、行列の挿入や削除は無関係です。
9.引数の範囲の注意点
(1)範囲の下に行を挿入
問題
1月から12月までのデータがあります。
誤って12月を削除してしまったので、行を挿入、コピーをして、もう一度データを入力しました。この操作の問題点を述べなさい。
解説
複数の数値が入力されているということは、この範囲を引数とする関数があるかもしれないということを意識します。
そして、行または列の操作をすると引数が変更されるということに注意します。
行を削除すると引数が1行分減ります。
引数の下の端に行を挿入しても引数は変わりません。
誤って12月を消した場合には、11月をコピーしてその行の上に挿入します。
引数が12月までになります。
(2)範囲の上に行を挿入
問題
1月から12月までのデータがあります。誤って1月を削除しまったので、行を挿入、コピーをして、もう一度データを入力しました。
この操作の問題点を指摘しなさい。
解説
行を削除すると引数の範囲が減ります。
引数の範囲の上の端に、行を挿入しても引数は戻りません。
1月を削除した場合には、2月をコピーして、下に挿入します。
これで引数が1月からになります。
(3)ダミーの行を用意する
問題
このような操作ミスを防ぐ方法を考えなさい。
解説
行の挿入や削除に備えて、上下にダミーの空白行を用意しておくことがあります。
引数も空白行を含むようにします。
行を挿入したときに、広がるので便利です。
特に、下にデータを追加する可能性がある場合には、空白の行を用意して、行の追加ができるようにしておくのが一般的です。
ダミーとして用意している行は、削除してはいけません。
解説は以上です。
10.動画版はこちら(無料)
この記事は、わえなび実力養成講座「ファンダメンタルExcel」Program 11-6、11-7、11-8 のYoutube動画を書き起こして、加筆修正したものです。
- ファンダメンタルExcel 11-6 引数2(引数の個数)【わえなび】(ファンダメンタルExcel Program11 関数総論)
- ファンダメンタルExcel 11-7 引数3(セル範囲の参照)【わえなび】(ファンダメンタルExcel Program11 関数総論)
- ファンダメンタルExcel 11-8 引数4(行列の挿入と削除)【わえなび】(ファンダメンタルExcel Program11 関数総論)