仕事でパソコンを使うのが当たり前の時代になりました。パソコン初心者の皆さんはスキルをアピールするために資格を取ることを検討するはずです。
パソコン教室側もその初心者のニーズが分かっているので、「MOS資格対策講座」を行っています。しかも、初心者が何も知らないことをいいことに(悪い言い方をすれば弱みに付け込んで)できるだけ高額な受講料を取ろうとしています。
簡単に言えば、パソコン教室のMOS資格対策講座は「儲かる」のです!
このような戦略に引っかかってパソコン教室に通うことを検討されているのであれば直ちに計画を改めるべきです。そこで、今回は、パソコン教室のMOS資格対策講座を初心者が受講することの問題点について解説します。
目次
- 1.パソコン資格を取ることのメリット
- 2.なぜ、初心者がいきなりMOSの勉強をしてはいけないのか?
- 3.最速で合格するMOSの正しい勉強方法
- 4.パソコン教室のMOS資格対策講座が役に立たない8つの理由
- 5.パソコンの通信講座?
- 6.パソコン教室は何のためにあるのか?
- 7.最後に
1.パソコン資格を取ることのメリット
(1)MOSはパソコン資格の中で最もおすすめ
MOSは「マイクロソフトオフィススペシャリスト(Microsoft Office Specialist)」といい、WordやExcelの開発元であるマイクロソフト(Microsoft)が公式に認定するパソコンの検定試験です。パソコンの資格はMOS検定の他にもいろいろありますが(参考:パソコン資格検定試験の受験料と出題範囲まとめ)、MOSが最も認知度が高く、最もおすすめできます。
MOSに合格する最大のメリットは第三者がパソコンのスキルを証明してくれることです。履歴書に書くことも可能です。企業側が必ずしもMOSを求めているとは限りませんが、パソコンが使えることをわざわざ口頭で説明するよりも、簡単に証明する手段があったほうがお互いに楽ですね。
(2)モチベーションが上がる
パソコンを習得するのにだらだらと勉強するくらいなら、「中間目標」をもって勉強したほうがやる気が出ます。近い将来に設定されたゴールがあれば、途中に困難なことがあっても前進しやすくなります。
2.なぜ、初心者がいきなりMOSの勉強をしてはいけないのか?
とにかくMOSに合格したい、時間が無いから早く取得したいという人は、一度落ち着いて考えてみましょう。近道には落とし穴があるのです。
(1)筆記試験とは異なる
日商簿記、英語、宅建、ファイナンシャルプランナーなどのように、通常は、資格の勉強をすると基礎を習得することもできます。しかし、パソコンは実技試験なので手や指や目のトレーニングが重要です。資格の勉強をする前に、基礎の習得が必要なのです。
また、MOS試験で出題されるスキルは、パソコンの基礎、Word・Excelの基礎(土台)の一部にすぎません。コンピュータ試験の性質上、採点できないスキルもあります。出題範囲だけに限定して勉強しても実際には使えません。
(2)逆に時間がかかる
MOSの模擬問題は、基礎が身についていれば簡単に解けますが、基礎をおろそかにしている人にとっては全く意味不明な問題の連続です。パソコンの初心者が、MOSの試験勉強をいきなり始めるのは「遠回り」であることに気がつくべきです。基礎も習得できず、時間的に損をしてしまいます。
(3)合格しただけでは使えない
MOSの合格証明書を持っているだけでは仕事でWordやExcelを使うことができません。MOSの試験問題はあくまで問題文で与えられた指示に従って操作する能力を問うものであって、MOSの合格証明書は「指示通りに操作できること」を証明しているに過ぎません。
実際の仕事では、試験の問題文のように明確な指示があるわけではなく、自分で状況判断をして、自分で考えて最善の操作方法を選んで操作しなければならないのです。
MOS合格を中間目標にするのは良いですが、初心者が目指すべき最終目標は、合格証書をもらうことではなく「一人でパソコンを使えること」であるということを忘れてはいけません。
3.最速で合格するMOSの正しい勉強方法
当サイトでは、MOSのWord試験、Excel試験の正しい勉強の仕方、MOSを受験するときの心構えについてそれぞれ解説しています。
- 【MOS試験】Word一般レベル受験対策おすすめの本と合格までの流れ
- 【MOS試験】本音で語るExcel一般レベル受験対策と合格後のこと
- MOS(Microsoft Office Specialist)は独学で勉強できる?60個の質問を勝手に解説します。
これらの記事の繰り返しになりますが、MOSの試験勉強は、パソコンの基礎、Word・Excelの基礎(土台)の上に成り立つものです。パソコンの電源の入れ方や周辺機器の接続の仕方はもちろんのこと、タイピング、WordやExcelの基本的な使い方が分からなければ、MOSを受験する資格すらありません。
最速でMOSに合格したければ、まずパソコンの基礎とWord・Excelの基礎(土台)を体系的に学ぶべきです。このとき、MOSの勉強とは切り離して、基礎だけをしっかりと身につけるべきです。Word・Excelそれぞれ30時間程度の学習時間で習得できます。
そして、土台がしっかりすれば独学で簡単に合格できます(自宅で勉強できない人は図書館やネットカフェ等で勉強する方法もあります)。MOSの試験対策本を買って、2週間くらい試験勉強をすれば余裕で合格できます。1週間で合格できる人もいます。この記事を書いているわえなび管理人は何回もMOS試験を受けていますが、パソコン教室の授業を受けたことは一度もありません。
これが正しい勉強方法です。これ以上の最適な勉強方法は絶対にありません。
ネット上にも独学で合格した人の合格体験記が見られますが、ほぼこの方法で最短・最安で合格しています。仕事で、自己流でパソコンを使っている人も、上記の「基本書」をサクッと読み直して自分の知らない知識を補ってからMOSの試験勉強をすれば簡単に合格できます。
4.パソコン教室のMOS資格対策講座が役に立たない8つの理由
(1)順番を守りましょう
ところで、山の頂上を目指す、もしくは自分が行きたい目的地に到着するのに何通りかのルートがあったとします。そこから最適なルートを選択するのに必要なのは、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを知っていることです。
WordやExcelの操作によって最終的なデータを得るのに、通常、複数の操作方法があります。「自分でパソコンを操作できる」というのは、自分で状況判断をして、複数の操作方法の中から最適なものを選べるということです。MOS試験で言えば、試験の問題文に合う操作方法を自ら選択しなければなりません。
基本をひと通り身につけてから、MOSの問題を解くという順番は必ず守るべきです。模擬問題の解答・解説を見て、なぜその操作方法が最適なのかというのは、考えられるすべての操作のメリットとデメリットを学ばなければ決して理解することができないのです。
「MOSの勉強をしながら基礎を学ぶ」といった誤った学習方法では、自分で最適な操作方法を選ぶ練習ができないのです。パソコン教室の講師の言われるがままに操作をしても、全く意味がないのです。
(2)パソコン教室は高額すぎる
MOSの対策問題集は1冊2000円台です。WordとExcelを2冊買っても5000円以内で済みます。基礎を習得するための基本書を合わせても1万円以内です。本来ならこれだけで合格できます。パソコンの基本の資格ですからこれ以上のお金を払う必要はないのです。
これに対して、何の役にも立たないMOS資格対策講座の受講料は6万円~10万円が相場です。しかも、これ以外に入学金、教室維持費、会費、パソコン使用料などの名目で手数料を取られます。馬鹿馬鹿しい話ですね。パソコン教室が「MOS資格対策講座」をことさらに宣伝するのは、何も知らない初心者をターゲットにして利益を上げるためであることに注意しなければなりません。
それだけのお金があれば、簿記やファイナンシャルプランナーなど別の資格を取得したほうがましです。
(3)合格した後のことを考えよう
MOS資格対策講座を受講する理由の一つとして挙げられるのは、問題が解けなかったらすぐにパソコン講師に質問できるというのがあります。これは単なる甘えです。
そもそも「なぜMOS資格を取得するのか」を思い出してください。第三者に対してパソコンスキルをアピールするためです。履歴書に書くのはパソコンを使って仕事ができることをアピールするためです。MOSの模擬問題すら一人で解けない人が、職場でパソコンを一人で使えるのでしょうか?
一人で何もできなかったら、周りの人に質問して迷惑をかけるだけではないのでしょうか?
分からなければWebサイトを検索して調べることも重要なスキルです。職場では、検索しながら自分一人の力で仕事をしていかなければなりません。あえて他人の力に頼らず、独学で合格することに意義があるのです。
(4)MOSは完ぺきを目指す必要はない
正しい勉強方法をしたあとで、対策問題集の模擬問題を繰り返し練習すれば、本番で1000点満点中900点以上は確実に取れます。パソコン教室にわざわざ通うメリットは全くありません。
しかし、たまに、対策問題集の模擬問題の正解判定が誤りがあったり、正確な操作をしたつもりなのに正解にならなかったりすることがあるようです。その多くは本人の勘違いなのですが、1個や2個くらい正解にならなくても気にする必要はありません。だいたい700点くらいとれば合格できますから、対策問題集の1問や2問くらい正解にならなかったところで合否に影響するものではありません。
対策問題集には模擬問題の正解と操作方法を載っているので、その通りにゆっくり操作してみて正解にならなければ、飛ばしてもかまいません。自己流でやってみて正解にならなければ「自己流は良くない」と反省しましょう。
もし、本当に不安であれば、ココナラやクラウドワークスで1000円や2000円程度で相談に乗ってくれる人がいるようですから探してみてはいかがでしょうか。
(5)MOSに合格してから基礎を学ぶのは本末転倒
パソコン教室のなかには「MOS資格対策講座でMOSに合格してから基礎を学べばよい」などとクソみたいな宣伝をするものもあるようです。言語道断です。
基礎を知らなくても奇跡的に試験問題が解けるかもしれませんが、全く意味がありませんし時間の無駄です。パソコン講師に助けられながら意味も分からずに合格証書をもらって何の意味があるのでしょうか?
公式サイトにも明確に記載されていますが、MOS試験はWordやExcelの基本的な操作を理解している受験生を想定していて、そのスキルを証明するために実施されるものです。それを無視して「問題練習だけをすれば良い」などと言うのは、MOSの試験制度を根幹から否定するものであり、到底許されない主張です。
試験概要|MOS公式サイト(試験レベルについて)
https://mos.odyssey-com.co.jp/outline/
基礎をないがしろにして合格するテクニックだけを教え、MOS資格の価値を下げるような低レベルな合格者を量産するパソコン教室はさっさとつぶれてしまえばよいです。
(6)合格率90%以上?
パソコン教室の広告では9割以上の人が合格しているなどと宣伝しているものもあります。しかし、パソコンの基礎、Word・Excelの基礎(土台)がしっかりできていれば誰でも合格できます。
独学でも100%合格できるのです。わえなび管理人はMOS試験で不合格は一度もありません。自慢しているわけではなくこれが普通なのです。むしろ、高額な授業料を払って落ちる人がいるというのが不思議で仕方がありません。
(7)試験会場はパソコン教室だけではない
パソコン教室がMOSの試験会場を兼ねていることが多いですが、必ずしもパソコン教室に行かなければ受検できないというわけではありません。
MOSの公式サイトで全国約1700か所の試験会場を検索することができます。パソコン教室以外にもテストセンターがあることが分かります。随時試験の場合、各試験会場で試験日程を設定することができます。自宅の近くの試験会場で受けるか、または自分のスケジュールに合わせて試験会場を選ぶのかは、受験者の自由です。
随時試験の流れ|MOS公式サイト
https://mos.odyssey-com.co.jp/exam/zuiji.html
基礎をひと通り勉強したら、2~3週間後に合格目標となる受験日を決めて、MOS試験対策をすると一発で合格できますよ。
特定のパソコン教室に通学してしまうと、そのパソコン教室のスケジュールに合わせて受験をしなければならないので極めて不便です。また、試験結果や点数などの個人情報をパソコン講師に知られてしまいます。
(8)パソコン教室も基礎が大事であることを認識している?
実は、MOS資格対策講座を実施しているパソコン教室の多くは、「パソコン基礎講座」「Word入門講座」「Excel入門講座」といった初心者向けの講座を開講しています。また、「MOS資格対策講座」のなかには、基本的な操作を理解していることを受講の条件としているものもあるようです。
MOS対策の講座を担当している講師としても、マウスもキーボードも触ったことのない初心者に試験対策を教えるのは苦痛だと思います。MOS資格対策講座を受けようとしている初心者には、本当は、基礎講座・入門講座の受講をすすめたいのではないでしょうか?
しかし、基礎を習得してしまえば前述の対策問題集で合格できるはずですから、MOS資格対策講座を受ける必要が無くなるのです。パソコン教室が稼ぐためには、基礎とMOS対策を抱き合わせで提供するしかないのです。
5.パソコンの通信講座?
世の中には、MOS対策の通信講座というものまであるようです。まったく意味不明です。
- 自宅に教材が送られてきて自分のペースで学習できる
- 講師に分からないところをメールで質問できる
- 独学だと挫折してしまうけど通信講座ならフォローがある
などと言われていますが本当でしょうか(笑)
MOSの対策問題集を買ってさっさと勉強したほうが早いと思います。質問文をメールで送る暇があったらその質問文を検索サイトで検索すれば解決しますし、独学で挫折する人が通信講座なら続けられるなんてことは絶対にありえません。
6.パソコン教室は何のためにあるのか?
パソコン初心者が、パソコン教室を利用したほうが良い場合はおもに2つあります。
一つは、まったくパソコンを触ったことのない人にパソコンを触る場所と機会を設け、専門家の指導のもとでパソコンの基礎を一から学び、Word・Excelの基本を鍛えることです。パソコンを触るのが怖い人や相談の仕方すら分からない人はパソコン教室に通った方が早いです。
もう一つは、年賀状の作り方、名簿の管理の仕方、データベースの作り方など特定の目的で今までやったことのない使い方を学ぶ場合です。
決して「MOS資格対策講座」「パソコン検定講座」のような問題練習だけのためにパソコン教室に通ってはいけません。無駄な授業料を払うだけで何の得にもなりません。
MOS検定の勧誘をされたらきっぱりと断りましょう!!
7.最後に
残念ながら、パソコン教室のサイトには、MOS講座を受けて合格した人たちに合格証書を持たせて写真を撮り、合格実績を載せているものがあります。これだけの人たちが無駄な受講料を払ったのか・・・と悲しくなってしまいます。
パソコン教室のMOS資格対策講座を初心者が受講してもまったく役に立ちません。パソコン教室に通うなら「Word基礎」「Excel基礎」といった講座を受講するべきです。
パソコン教室は、初心者に対してくだらない早技や合格テクニックを教えるのではなく、「地道に基礎トレーニングをすることの重要性」を説くべきです。そして、早くMOSに合格したいからMOSの勉強だけがしたいという初心者に対しては、正しい勉強方法を説明し、基礎講座へ誘導をするのがパソコン教室の役割だと考えます。