恵方巻き丸かぶりとは、毎年2月の節分の日に特定の方向を向いて無言で太巻きを食べるというイベントです。もともとは関西地方の風習ですが、1990年頃にセブンイレブンがキャンペーンとして全国に広めたものです。今では、販売ノルマが課せられたり、過剰に生産されて廃棄されたり、訳の分からない便乗商品が販売されたりと、ウンザリするイベントになっています。
しかし、「恵方」そのものは陰陽道を発祥とする由緒正しき言い伝えであり、吉方位を占う考え方です。恵方巻きに限らず、恵方の方角に向かって行うことはすべて「吉」になると言われています。
そこで、今回は、Excelを用いて恵方巻の方角を表示する方法について解説します。正しい方角に向かってExcelを使えば、Excelが上達すること間違いなしです!!
目次
- 1.恵方巻きの方角について
- 2.西暦年を5で割った余り
- 3.IF関数を使わない方法を検討せよ
- 4.VLOOKUP関数・INDEX関数を用いる方法
- 5.整数の場合はCHOOSE関数を使う
- 6.補足:TODAYを用いる場合
- 7.三角関数を用いる方法(ネタ)
1.恵方巻きの方角について
(1)神に祈る気持ちが大事
「恵方」とは、陰陽道の方位神である歳徳神(としとくじん)がいらっしゃる方位のことです。歳徳神は1年間の全ての福徳をつかさどる女神であり、非常に美しく、容姿端麗とされています。歳徳神の方位に向かって事を行えば吉とされ、恵方の方角の神社にお参りをすると縁起が良いとされています。
歳徳神 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%B3%E5%BE%B3%E7%A5%9E
恵方巻は、恵方の方角に向かって願い事をしながら太巻きを食べるのですが、その方角には「歳徳神」がいらっしゃることを忘れてはいけません。そして、太巻きを食べるだけでなく、その方角に向かって幸運を祈りながら行動することはすべて「吉」となるのです。
(2)方角の求め方
歳徳神は、風水など東洋の占術で用いられる24方位の「甲」「丙」「庚」「壬」の方角にいらっしゃるとされ、簡単に言えば、東・西・南・北の方向より15度だけ反時計回り(左向き)にずれた方角となります。
そして、毎年その居場所を変えるため、恵方も毎年変わります。西暦年から求める場合は、最後の数字(1の位)で求めます。2024年の場合は「東より15度左向き」となります。
- 西暦年の1の位が「0」「5」の場合・・・西より15度左向き
- 西暦年の1の位が「1」「3」「6」「8」の場・・・南より15度左向き
- 西暦年の1の位が「2」「7」の場合・・・北より15度左向き
- 西暦年の1の位が「4」「9」の場合・・・東より15度左向き
コンビニ等のキャンペーンでは便宜上、南南東などの16方位が使われますが、占術では24方位が使われるため、実際には7.5度のずれがあります。例えば、2024年の場合は「東北東」となりますが、実際には東北東より7.5度東側となります。
- 西暦年の1の位が「0」「5」の場合・・・西南西より少し西
- 西暦年の1の位が「1」「3」「6」「8」の場合・・・南南東より少し南
- 西暦年の1の位が「2」「7」の場合・・・北北西より少し北
- 西暦年の1の位が「4」「9」の場合・・・東北東より少し東
北の方角を0時としたときの時間と、北の方角を0度としたときの角度(方位角)で表すと、それぞれ次のようになります。
- 西暦年の1の位が「0」「5」の場合・・・8時半・255度
- 西暦年の1の位が「1」「3」「6」「8」の場合・・・5時半・165度
- 西暦年の1の位が「2」「7」の場合・・・11時半・345度
- 西暦年の1の位が「4」「9」の場合・・・2時半・75度
(3)iPhoneコンパスで方角を調べる
iPhoneの場合、標準アプリの「コンパス」で方位角を調べることができます。Androidでは別途インストールが必要になります。
2024年の場合は75度です。これで正確な方角で恵方巻を食べることができます。片手にiPhone、片手に恵方巻を持って丸かぶりをしましょう(誤ってiPhoneを食べないように気を付けましょう)。
2.西暦年を5で割った余り
問題
A列に西暦年を4桁で入力した。5で割ったときの余りを求めなさい。
解説
恵方の方角は西暦年の1の位で求められますが、5年周期になっています。そこで、西暦年を5で割ったときの余りを考えます。
「=MOD(A2,5)」と入力します(参考:【Excel】MOD関数の使い方、INT関数との関係、マイナスの場合の余り)。
答えが0~4になります。これを利用することで恵方の方角を求めることができます。
3.IF関数を使わない方法を検討せよ
問題
A列に西暦年を4桁で入力した。恵方の方角を16方位で求めるときに、IF関数を用いてもよいか。
解説
いったん西暦年を5で割った余りを求めます。
IF関数を用いる場合は「1または3」の部分をその他として考えると、IF関数3個の入れ子となります(参考:IF関数の入れ子(ネスト)で3種類の表示をするときに条件の順番を間違えてはいけない)。
0の場合は西南西、2の場合は北北西、4の場合は東北東、それ以外は南南東となります。
- =IF(B2=0,"西南西",IF(B2=2,"北北西",IF(B2=4,"東北東","南南東")))
しかし、西暦年から直接方角を求める場合は、MOD関数も3回呼び出すことになり数式が長くなります。IF関数の入れ子が3つ以上になる場合、IF関数を使わない方法が無いかを検討するべきです。
- =IF(MOD(A2,5)=0,"西南西",IF(MOD(A2,5)=2,"北北西",IF(MOD(A2,5)=4,"東北東","南南東")))
4.VLOOKUP関数・INDEX関数を用いる方法
問題
A列に西暦年を4桁で入力した。VLOOKUP関数またはINDEX関数を用いて恵方の方角を16方位で求める場合、どのような表を入力すればよいか。
解説
VLOOKUP関数を用いる場合の検索値は、IF関数で求める場合の条件、つまり西暦年を5で割った値です。したがって、最も左側の列に0~4の数字を入力して、2列目に方角を入力すればよいです。
VLOOKUP関数の検索値を「MOD(A2,5)」にします。
- =VLOOKUP(MOD(A2,5),$D$2:$E$6,2,0)
INDEX関数の場合は方角だけ入力すればよいです。
INDEX関数の第2引数は行番号なので、余りに1を足します(列番号は省略できる)。
- =INDEX($D$1:$D$5,MOD(A2,5)+1)
表を入力せず、配列定数を用いる場合は次のように入力します(参考:【Excel関数】シンプルな数式を作るのに「1次元の配列定数」という方法があります(基礎編))。
- =INDEX({"西南西","南南東","北北西","南南東","東北東"},MOD(A2,5)+1)
5.整数の場合はCHOOSE関数を使う
問題
A列に西暦年を4桁で入力した。CHOOSE関数を用いて、B列~D列に恵方の方角を「西南西」「西より左に15度回転」「255」などと表示しなさい。
解説
検索値が整数の場合はCHOOSE関数を使います。INDEX関数の代わりに、CHOOSE関数を使います。
- =CHOOSE(MOD(A2,5)+1,"西南西","南南東","北北西","南南東","東北東")
同様に、15度回転、方位角を求めます。
- =CHOOSE(MOD(A2,5)+1,"西","南","北","南","東")&"より左に15度回転"
- =CHOOSE(MOD(A2,5)+1,255,165,345,165,75)
*補足*
マクロの場合もChoose関数が使えます。Chooseを使うか、一次元配列に方角を格納して呼び出せばよいです。
別解
B列の先頭の文字と、C列の先頭の文字は同じです。そこで、16方位の先頭の文字をLEFT関数で取り出して求めることもできます(参考:【Excel】LEFT関数、RIGHT関数、MID関数で文字列を抽出する方法の基本例題)。
- =LEFT(B2)&"より左に15度回転"
6.補足:TODAYを用いる場合
TODAYを用いて今年の恵方の方角を求める場合は、今年の西暦年「YEAR(TODAY())」を使って求めます。
- =CHOOSE(MOD(YEAR(TODAY()),5)+1,"西南西","南南東","北北西","南南東","東北東")
7.三角関数を用いる方法(ネタ)
問題
A列に西暦年を4桁で入力した。三角関数を用いて恵方の方位角(北を0度とする角度)を求めなさい。
解説
恵方の方角は5年周期です。
したがって、360/5=72度の周期で三角関数の式を作ればよいです。72度は弧度法では2/5*PI()です(参考:Excelの三角関数(SIN・COS・TAN)の具体的な使い方と注意点)。
西暦年をXとすると、恵方を表す方位角は次のように表すことができます。ただし、aは、西暦を5で割った余りが1のときはa=1、それ以外はa=0とします。
Excel関数で書くと次のようになります。CHOOSE関数のほうが簡単ですね・・・
- =INT(SIN(A2*2/5*PI())*2-(MOD(A2,5)=1)*3+3.5)*90-15
別解
「INT(SIN( (X*2+0.1)/5*PI())*2.5+3.6)*90-15」と書くこともできます。ただし、360以上の場合は360を引きます。
MOD関数で次のように書けます。
- =MOD(INT(SIN( (A2*2+0.1)/5*PI())*2.5+3.6)*90-15,360)
解説は以上です。