選挙はたくさん得票をとった人が当選!というのが一番分かりやすいのですが、いろんなデメリットがあるため、比例代表制をあわせて実施することがあります。日本の衆議院議員や参議院議員の選挙では比例代表の投票も行われます(比例代表並立制)。
そして、法律によれば、比例代表の議席配分は「ドント方式(ドント式、D'Hondt method)」と呼ばれる計算方法によって決定することになっています。そこで、ドント方式の計算について復習しながら、Excelで計算する方法について出題します。
目次
- 1.公職選挙法
- 2.各候補者のポイントを計算する(絶対参照)
- 3.複数の政党があった場合(複合参照)
- 4.ドント方式(ドント式)による議席配分
- 5.ポイントが同数の場合はくじ引きで決める
- 6.名簿の人数が配分された議席より少ない場合
1.公職選挙法
比例代表制の議席配分の計算方法は、公職選挙法によって定められています。公職選挙法95条の2が衆議院、95条の3が参議院です。衆議院と参議院の条文はほぼ同じです。
その第1項は、当選人の数の決め方について定めています。長いですね・・・
公職選挙法第95条の2第1項
衆議院(比例代表選出)議員の選挙においては、各衆議院名簿届出政党等の得票数を一から当該衆議院名簿届出政党等に係る衆議院名簿登載者(当該選挙の期日において公職の候補者たる者に限る。第百三条第四項を除き、以下この章及び次章において同じ。)の数に相当する数までの各整数で順次除して得たすべての商のうち、その数値の最も大きいものから順次に数えて当該選挙において選挙すべき議員の数に相当する数になるまでにある商で各衆議院名簿届出政党等の得票数に係るものの個数をもつて、それぞれの衆議院名簿届出政党等の当選人の数とする。
この条文を短くすると次のようになります。
比例代表は、各政党の得票数を、一から候補者数までの各整数で除した商のうち、最も大きいものから順に数えた個数をもつて当選人の数とする。
除する(じょする)とは「割り算をする」という意味なので、割り算によって議席配分の計算をしていることが分かります。ということは、Excelでも計算できるということです。
2.各候補者のポイントを計算する(絶対参照)
問題
候補者10名の政党が3600票獲得した場合、各候補者のポイントを計算しなさい。また、4200票だった場合はどうか。
解説
法律では「一から候補者数までの各整数で除した商」と定められています。簡単に言えば、政党の得票数を、1、2、3、・・・で割った答え(除した商)を、各候補者の持ち点(ポイント)とします。
政党の得票数が3600の場合、名簿の1人目は3600/1=3600ポイントが持ち点となり、10人目は3600/10=360ポイントが持ち点となります。
これをExcelで計算する場合、3600を1~10で割るのですが、3600は絶対参照にしなければなりません。
なお、絶対参照についてはこちらの記事をご覧ください。
このように絶対参照の計算式を入力しておけば、得票数が変わった場合も自動的にポイントが再計算されますから便利です。
3.複数の政党があった場合(複合参照)
問題(千葉県公立高校入試・改題)
A~Dの4つの政党の得票数がそれぞれ、15000票、12000票、6000票、3000票だった場合、名簿順位1位~10位までの候補者のポイントを計算しなさい。
解説
前述のように、各候補者のポイント数は、自分の所属する政党の得票数を順位で割ればよいです。計算式は次の通りです。
これをExcelで計算する場合、縦と横の2方向にオートフィルをすることから、複合参照にします。
※なお、複合参照についてはこちらの記事をご覧ください。
4.ドント方式(ドント式)による議席配分
問題
さきほどのA~Dの4つの政党で、定数が5議席の場合、当選に必要なポイント数と各政党の議席数を求めなさい。また、7議席の場合はどうか。
解説
公職選挙法では、「最も大きいものから順に数えた個数をもつて当選人の数とする」ことになっています。各候補者のポイント数が計算されていますから、ポイントが高い人から5人を当選者とすればよいです。
これで、各政党の議席数が決まります。これをExcelで計算する場合、LARGE関数を用いて当選に必要な最低ポイント数を求めます。つまり、すべてのポイント数のなかで5番目に大きい数を求めます。
- =LARGE(C6:F15,C1)
最低ポイント数は6000点となります。したがって6000点以上の候補者が当選です。COUNTIF関数で各政党の議席数を求めることができます。※COUNTIFの検索条件で不等号とセル参照をつなげる場合は「&」で連結します。また、合格最低点は絶対参照です。
- =COUNTIF(C6:C15,">="&$E$1)
塗りつぶしの色を変える場合は、条件付き書式-セルの強調表示ルール-その他のルールで、最低ポイント数以上とします。
これで完成です。当選に必要なポイント数は6000、各政党の議席数は2、2、1、0です。
7議席の場合は次のようになります。
このような議席配分の方式を、ドント方式またはドント式といいます。高校入試や中学校の期末テストにも出題されることがあります。手計算の場合は、各政党の得票数を1、2、3、の順で割っていき、最大得票政党が、当選に必要な最低ポイント数より小さくなった時点で計算を止めます。
5.ポイントが同数の場合はくじ引きで決める
問題
さきほどの例で定数が10議席の場合はどうか。
解説
定数を10議席にすると、各政党の議席数が、5、4、2、1となりあわせて12議席になってしまいます。当選に必要なポイント数は3000ですが、3000点の人が4人もいるので、10議席を超えてしまったのです。
ポイント数が同じ場合にどのように当選者を決めるのかについても、公職選挙法に定められています。
公職選挙法第95条の2第2項
前項の場合において、二以上の商が同一の数値であるため同項の規定によつてはそれぞれの衆議院名簿届出政党等に係る当選人の数を定めることができないときは、それらの商のうち、当該選挙において選挙すべき議員の数に相当する数になるまでにあるべき商を、選挙会において、選挙長がくじで定める。
短くすると次のようになります。議席数が決まらないときはくじ引きで決めます。
同一の数値であるため、政党の当選人の数を定めることができないときはくじで定める。
そこで、さきほどの条件付き書式をクリアします。
条件付き書式-セルの強調表示ルール-指定の値より大きいで、最低ポイント数より大きいとします。
さらに、同じ範囲で、条件付き書式-セルの強調表示ルール-指定の値に等しいで、最低ポイント数と等しいとします。
このように、合格ライン上の人はくじ引きになる可能性がありますので色を変えておきます。
当選者数をCOUNTIF関数で求めると12となり、定数を超えています。
- =COUNTIF(C6:F15,">="&E1)
定数を超えている場合、緑色の候補者は当選者とならないので、政党の議席数は次のようにIF関数を入れます。
- =COUNTIF(B6:B15,IF($B$18>$B$1,">",">=")&$D$1)
各政党の議席数が、4、3、1、0となり、残りの2名をくじ引きで決定します。
6.名簿の人数が配分された議席より少ない場合
問題
さきほどの例で定数が7議席の場合、B党の獲得議席数は3である。しかし、B党の比例名簿には2名しか載っていなかった。この場合はどうなるか。
解説
法律では「一から候補者数までの各整数で除した商」と定められています。つまり、割り算をするのは名簿に載っている人数までです。B党の名簿に2人しか載っていなければ、割り算は2までとなり、3で割った数(4000)については無効となります。
次に大きいのはA党の3750なので、A党が議席を獲得します。
解説は以上です。