ハローワークと言えば、就職できずに困っている労働者と、優秀な人材が流出して困っている会社が出会う場所であり、本当に困っている人は積極的に利用したほうが良いと思います。
しかし、1つだけ絶対に利用してはいけない物があります。それは、ハローワークが配布している神Excelの履歴書です。無能なエンジニアが一夜漬けで作ったようなお粗末なExcel履歴書を、公的な機関が配布するのはいかがなものかと思います。
そこで、ハローワークが以前から配布しているXLS形式の履歴書の問題点について語りたいと思います。
目次
- 1.ハローワークの神Excel履歴書
- 2.神ExcelがJIS規格とか冗談にも程がある
- 3.拡張子XLS
- 4.履歴書はビジネス文書です
- 5.手書きで書類を作る事務を雇いたいのか?
- 6.Wordが使えない事務職(笑)
- 7.まだ神Excelで消耗してるの?
- 8.追記:分割すればいいという問題ではない
1.ハローワークの神Excel履歴書
Excel履歴書は「インターネットサービス」からダウンロードができます。ハローワークの「JIS規格履歴書様式例」のExcelファイルをダウンロードしてみましょう。
履歴書・職務経歴書の書き方
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/member/career_doc01.html
ファイル名は「JISrirekisho.xls」です。
ファイルを開いてみると、普通の文書のように見えます。
それでは、セルの結合を解除してみましょう。何ということでしょう。列幅も行の高さもバラバラで、一生懸命に微調整をしたことがうかがえます。
そして、入力欄の高さを同じにするために、わざわざ1行ずつ0.5単位で行の高さを設定しているのです。本当に無駄な努力です。
当然、コピー貼り付けもできません。あまりにも低レベルな文書であり、町内会のオッサンが自慢げに作ったチラシとたいして変わりません。将来の人生がかかっている大事な履歴書を、Excelで適当に仕上げるとか本気で就職させる気があるのか?と疑いたくなります。
2.神ExcelがJIS規格とか冗談にも程がある
(1)JIS規格履歴書とは何か
ハローワークは何を根拠に「JIS規格」の履歴書だと言っているのでしょうか??
JIS規格履歴書とは、帳票の印刷の仕上がり具合を定める標準規格「日本工業規格JIS Z 8303:2008」に従った履歴書のことです。ご存知の方も多いと思いますが「JIS Z 8303」は履歴書の項目や様式を定めたものではありません。正式には「帳票の設計基準」と言いますが、余白や罫線の太さ、文字の大きさ、使用する漢字や仮名といった、印刷したときの書式の基準を定めた規格です。ここに、抜粋したものを示します。
- 項目は,必要記入事項ごとに欄を設け,その始めを縦にそろえる。(規格7.1-a)
- 余白は,通常紙のへりから5mm以上とする。(規格9.2)
- 帳票の名称 10~24ポイント、写真植字級数14~32級、太字体(規格10.1-b-表1)
(2)Excelは正確さに欠ける
Excelは画面表示の正確さよりも表示スピードを優先しています。マイクロソフトが「正確さに欠ける」のはExcelの仕様だ!!と断言しているのだから間違いありません。
(参考) Microsoft 公式見解
「ワープロソフトや DTP ソフトなどのように出力を重要視するアプリケーションよりは厳密ではない部分があります。」
異なる複数の Windows 環境で Excel ファイルを共有すると、印刷範囲、セルの幅、または高さが変更される場合がある
https://support.microsoft.com/ja-jp/help/400271
上記のページで、マイクロソフトは同じExcelファイルであっても「ずれ」が生じ、その原因は環境に依存すると言っています。このことはExcelを使って仕事をする全ての人が知っていなければならない基本知識です(参考:【Excel】画面表示の通りに印刷できないのは「速度優先」だからです)。
Excelで作った帳票は、画面表示の通りに印刷できません。プリンタによって印刷結果が異なり、文字がずれたり切れたりすることもあります。神ExcelでJIS規格の帳票なんて作れるわけがないのです。
(3)項目の編集ができない
JIS規格は履歴書の項目を具体的に定めているものではありませんので、項目を変えたり、減らしたり、アピールしたい項目の入力欄を増やしたりするのは自由です。しかし、神Excelの場合、列幅や行の高さを無理矢理調整しているため、項目の編集をすることができません。
3.拡張子XLS
ハローワークに限らず、官公庁がオープンデータとして配布するExcel文書の中には「XLS形式」のファイルが結構あります。
わざわざ説明するまでもありませんが、XLS形式は97-2003形式とも呼ばれる古い形式です。すでにExcel2007以前のサポートが終わっているにもかかわらず、XLSのファイルを配布するのは良くないと思います。
4.履歴書はビジネス文書です
(1)明朝を使いなさい
XLSの履歴書を細かく見ると、残念な箇所が次々と見つかります。まず、氏名がHG正楷書体-PRO、現住所がMS明朝です。フォントが統一されていない文書はビジネス文書として失格です。
通勤時間や扶養家族の欄などで「HG正楷書体-PRO」を使用していますが、これはJIS規格に違反しています。JIS Z 8303には「文字の書体は,通常,明朝体とする。」(10.1-a)と規定されています。JISに定められているか否かにかかわらず、ビジネス文書は明朝体で作るのが当たり前です。
(2)スペースを位置合わせに使うな
志望動機と本人希望記入欄が揃っていません。これは全角スペースと半角スペースで文字の位置を揃えようとしているからです。スペースで位置合わせをするのは、パソコンの使い方として根本的に間違っています。このExcel履歴書を作った人こそ、文書作成の職業訓練を受けるべきです。
5.手書きで書類を作る事務を雇いたいのか?
ところで、ハローワークのパンフレットには次のような記述があります。
以前は圧倒的に手書きをお勧めしていたのですが、今は「手書きでもパソコンでも構わない。」とする企業が多いので、履歴書作成に充てられる時間などを考えてそのいずれかを判断します。
(パンフレット「履歴書の書き方」(2)履歴書の作成の基本)
令和の時代に手書きの履歴書を求めるとか、愚かとしか言いようがありません。そのような企業は入社してから苦労するので、書類選考の段階でこちらから丁重にお断りするのが正解だと思います。
ハローワークの求人の中にはパソコンを使わない職種もありますので一概には言えませんが、基本的に履歴書はパソコン一択です。特に事務職を採用しようとするときに手書きの履歴書を求めるのは時代遅れというべきです。パソコンのスキルが生かせる職場ではないと考えられます。
- ご丁寧に、長い時間をかけて手書きの文書を作るような事務職を雇いたいですか?
- 勤務時間中に机の上で清書をする仕事をしてほしいですか?
- 自分の会社を紹介するときにわざわざ取引先に手書きの文書を渡しますか?
手書きで書かなければならない社内文書があったら、それをパソコンで処理することができないかを検討するのが、本来の事務の仕事ではないでしょうか?
採用担当者が非効率な書類の提出を求めるのは、その担当者本人またはその上司が非効率な仕事をしている疑いがあります。そんな非効率な採用活動をしているから優秀な人材が奪われて、結果としてハローワークを頼ることになるのです。ハローワークも、そんな会社を見つけたら行政指導でもしたらいいんじゃないかと思います。
6.Wordが使えない事務職(笑)
多少景気が回復したとはいえ、事務職の求人は依然として少なく、なかなか就職先が決まらないというのが現実です。そんな状況で、神Excelでビジネス文書を作るような非常識な人間が事務職として採用されるわけがありません。
事務職志望者がパソコンのスキルをアピールしたいのであれば、当然、履歴書はWordで作るべきです。
というわけで、Wordで履歴書を作ってみました。Excelで馬鹿げた位置合わせをするよりも、Wordで作ったほうが100倍速く仕上がります。A4で作っていますが、A3用紙の袋とじ印刷も可能です。
7.まだ神Excelで消耗してるの?
最近、官公庁の神Excelが問題となっています。ゴミExcelがまき散らされることによって、多くの人の労働時間が無駄に費やされています。再利用がしにくいなどの問題点が指摘されていますが、その議論の前に、ビジネス文書がまともに作れないスキルの無さを反省するべきです。
8.追記:分割すればいいという問題ではない
このブログを公開した直後、ハローワークのホームページに「A3分割」とかいう意味不明な物が追加されました。
履歴書を左右に分割したものですが、左側も右側も2ページになります。だーかーらー、プリンタドライバ等の環境によって印刷結果が変わるんです。厚生労働省の複合機と一般家庭の安いプリンターでは出力結果が異なるのです。
大事な履歴書を縮小印刷するとかもあり得ないし、そもそもExcelで応募書類を作ること自体が間違っていると何度言ったら分かるんでしょうか??