100%を超える数を掛けると元の数より大きくなり、逆に100%未満の数を掛けると元の数より小さくなります。割合やパーセントというのはもともと、小数の掛け算をすることによって元の数を一定の割合で増やしたり減らしたりする計算です。したがって、通常は元の数があることが前提で、増やしたり減らしたりするために割合の計算をします。
しかし、元の数が分からない状態で、割合同士の掛け算をしたり、パーセント同士の掛け算をしたりすることがあります。割合の計算が苦手な人は、「元の数が分からないのにパーセント同士の掛け算をすることに何の意味があるのか」「どうしてそのような計算式になるのか」「なぜ足し算ではダメなのか」・・・理解できないと思われます。
そこで、今回は、割合同士、パーセント同士の掛け算をする事例について解説します。
目次
1.割合を掛け算することの意味
まず、割合の計算を理解するには、小数を掛け算することによって元の数が増えたり減ったりすることを理解しなければなりません。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.増加率同士を掛ける
(1)2つの変化が連続して起こっている
問題
4月の売上が123,456円で、5月は5%売り上げを増やしたいと考えている。そして、6月は、5月の売上より10%増やしたいと考えている。6月の売上目標はいくらか。また、6月の売上は、4月の売上より何%増やすことになるか。
解説
5月の売上は4月の5%増(105%)なので、「=B2*1.05」です。
さらに、6月の売上は5月の売上からさらに10%増やしたい(110%)ので、「=C2*1.1」となります。
6月の売上は、4月から見ると1.05倍してから1.1倍しています。したがって、「=B2*1.05*1.1」とすることもできます。
変化率(増加率)を求めてみましょう。変化率は、変化後を変化前で割ります。6月の売上目標を4月の売上で割ります。1.155=115.5%となります。つまり、15.5%の増加ということになります。この値は1.05と1.1を掛けた値です。
4月と6月を比較すると、5%増えることと10%増えることが連続で起こっています。つまり、1.05倍と1.1倍の2つの変化が連続して起こっています。増えることが2回連続して起こっている場合は、増加率(パーセント)の掛け算となります。
(2)交換法則が成り立つ
問題
さきほどの問題で、「5%増」と「10%増」を逆にすると6月の売上目標はいくらか。
解説
5月の売上は4月の10%増(110%)なので、「=B2*1.1」です。
さらに、6月の売上は5月の売上からさらに5%増やしたい(105%)ので、「=C2*1.05」となります。
6月の売上は、4月から見ると1.1倍してから1.05倍しています。したがって、「=B2*1.1*1.05」とすることもできます。倍率を逆にしても答えは同じです。それは掛け算は「A*B=B*A」の交換法則が成り立つからです。
「5%増」と「10%増」を逆にしても2つの増減が連続して起こっていることに変わりは無いので、105% * 110% = 115.5%で、15.5%の増加ということになります。
(3)なぜ足し算ではないのか
問題
元の数を5%増やし、さらに10%増やすと、結局何%増やしたことになるか、Excelを用いて計算しなさい。
解説
さきほどの問題で、「5%増」と「10%増」が連続して発生した場合は、15.5%増になるという結果になりました。これは元の金額がいくらでも同じことです。まず、5%に1を足します。105%になります。「5%増」とは105%のことです。
これに、110%をかけます。これで115.5%となります。
1を引きます(参考:増減率をパーセントで求めるには、増減を表す比率から1を引くだけ)。これで15.5%増となります。
「105%*110%-1」で、15.5%となります。
ところで、元の数を100%とすると、増加した分は5%と10%であわせて15%であるかのように見えます。
しかし、これは5%増と10%増の変化が「別々に」発生している場合の話です。2つの増加が別々に発生している場合は足し算で15%です。
今回の場合は、5%増によって増えた金額(105%)をもとにして、さらに10%を増やしています。増えた5%分も含めて10%増にしているので、0.5%多くなるのです。
例えば、2倍したものをさらに3倍すると、5倍ではなく、掛け算で6倍となります。このように、増減の変化が「連続して」発生する場合は足し算ではなく掛け算となるのです。
3.増加率と減少率を掛ける
(1)割増と割引
問題
10%の消費税を加算した後で、その税込価格の1割引で販売した場合、消費税分を割引したことになるか。また、2割引きの値札を付けた商品を、さらにレジで3割引きにすると半額になるか。
解説
2つの増減の変化が連続して起こる場合は、その増減率(倍率)を掛け算することで合わせた増減率を求めることができます。10%加算した時の倍率は110%=1.1倍、1割引きをした時の倍率は90%=0.9倍ですから、掛け算すると、0.99倍=99%です。
1から引くと、1%減となります。消費税を加算する前より1%分値段が下がります。
それは元の価格が1割引きになるだけでなく、加算した消費税も1割引きになるからです(10%の1割は1%)。
同様に、2割引きの倍率は80%=0.8倍、3割引きの倍率は70%=0.7倍なので、掛け算すると0.56倍=56%となります。
1から引くと、44%OFFとなります。半額よりも高くなります。
元の値段に対して2割引と3割引をそれぞれ適用すれば、2割+3割で当然半額になります。しかし、レジで割引するときの3割引は、元の値段を3割引きするのではなく、値下げしたものを3割引しています。20%分については3割引が適用されないので半額にはならないのです(2割*3割=6%分の値引きが無い)。
(2)拡大と縮小
問題
B5をA4に拡大するには115%、A4をA3に拡大するには141%の拡大コピーをすればよいことが分かっているものとする。B5をA3に拡大するときの拡大率は何%か。また、A3をB5に縮小するときの縮小率は何%か。
解説
B5をA3に拡大するには、115%の拡大の後、さらに141%の拡大をすることになります。この場合も2つの増加を連続して行うのですからパーセンテージの掛け算となります。
縮小するときは割り算なので逆数になります(参考:【Excel】逆数と反数、平方根、累乗は初心者の段階で習得すべき_数式の基本)。
別解
それぞれの拡大率の逆数を求めると、それぞれの縮小率を求めることができます。これらを掛けることによって縮小率を求めても同じです。
4.構成比と構成比を掛ける
(1)ローン
問題
自動車を購入し、最初に購入金額の13%を支払い、残りを24回払いとする場合、分割払いの1回分の金額は、自動車の購入金額の何%にあたるか。
解説
最初に13%を支払ったということは、残りは1から引くことで87%であることが分かります。
24回払いをするということは24で割ればよいです。3.75%になります。
別解
24回に分割して支払うということは24分の1です。パーセントにすると約4.16%です。
87%にこれを掛けても同じ値になります。
全体の87%分について、さらに4.16%を求める場合は掛け算になります。このように、内訳の中でさらにその内訳をパーセンテージで求める場合は、パーセントの掛け算になります。
(2)借金
問題
ある金額を借り入れたとする。1年目は借入金の20%を返済し、2年目以降はその借入残高(返済すべき残りの金額)の20%を支払うことを繰り返すことにした。3年目の返済をした後の残高は、元の借入金の何%か求めなさい。
解説
1年目に20%を返済したということはその残りは80%です。
残りの80%を基準として、さらにその20%を求める場合は掛け算をします。16%です。返済金額(パーセント)が少し減るのは、残高が減っている(20%の対象が減っている)からです。
16%返済をすると残りは64%です(参考:【Excel数式】計算が苦手な人のための「累計」「残高」「繰越」)。
さらに、残りの64%を基準として、さらにその20%を求める場合は掛け算をします。12.8%です。これを返済すると残りは51.2%です。
別解
残高の20%を返済するということは、残高を80%残すということです。3回返済するということは、80%にするのを3回繰り返すのと同じです。したがって、80%を3回かけても同じ答えになります。
5.確率の掛け算
問題
晴れの日の次の日が、晴れである確率が60%であることが分かっている。4日連続で晴れになる確率を求めなさい。
解説
4日連続で晴れになるということは、60%で起こる事象が3回連続して発生することと同じです。したがって、60%*60%*60%、つまり、60%の3乗です。
6.パーセントの平均を求めてはいけない
問題
晴れの日は10%の利益、曇りの日は4%の利益が発生し、雨の場合は2%の損失が発生することが分かっている。明日の天気が晴れ、曇り、雨になる確率がそれぞれ60%、30%、10%である場合、明日は何%の利益が期待できるか。
解説
3つの平均を求めると4%となりますが、これは全く意味のない数値です。晴と曇りと雨の確率が同じとは限らない(重みが異なる)ので、同じものととらえて平均するのは間違いです(参考:【Excel関数】平均AVERAGEは、数値の個数COUNTを意識して使うこと)。※発生確率が同じであれば平均してもかまいません。
また、10%の利益、4%の利益、2%の損失は連続して発生するわけではないので、掛け算も間違いです。
それぞれの数値とその発生確率が分かっている場合は、加重平均をします(参考:【Excel関数】加重平均とは「重み」が異なることを考慮した平均のことです)。発生確率が比重(重み)を表すので、パーセント同士の掛け算になります。利益率と確率を掛け算します。
合計を求めます。これを「期待値」といいます。
解説は以上です。