小数の掛け算や割り算で発生した端数を処理するには四捨五入のほか、切り上げ、切り捨てがあります。切り上げはROUNDUP、切り捨てはROUNDDOWNです。
ところで、Excel関数の挿入で練習しなければならないスキルは次の3つです。そして、これらを習得するのに最も鍛えられる関数がROUND関数です。
- [fx]関数の挿入のボタンを用いた挿入
- 関数を用いた式の直接入力
- 関数の追加入力と計算式の直接編集
ROUND関数、ROUNDUP関数、ROUNDDOWN関数の3つをしっかりと練習することによって、数式バーに直接計算式を入力したり、数式を修正したりすることが簡単にできるようになります。そこで今回は、ROUND系の関数の練習問題(総まとめ)を出題します。
- ROUND関数と表示形式の違い、数式の検証で計算が合わない原因を見つける練習
- ROUND関数の桁数は「小数点の位置」を0として考えると分かりやすい
- ROUNDの使い方と挿入方法、エラーの原因を考える基本トレーニング
- ROUNDの数式の編集、単位換算とパーセント、入れ子の数式
- ROUNDの四捨五入の計算結果が合わないのはExcelのせいではない
- ROUNDUPとROUNDDOWN、切り上げ、切り捨て、四捨五入の練習問題
目次
問題文のあとに簡単な操作方法を解説していますが、静止画では、わかりにくいと思いますので、最後に動画を載せています。ぜひご覧ください。
- 1.ROUNDUP関数の挿入
- 2.ROUNDUP関数の追加入力
- 3.ROUNDDOWN関数の挿入
- 4.ROUNDDOWN関数の追加入力
- 5.ROUNDDOWNとINTの違い
- 6.関数名、桁数の変更
- 7.金額の端数処理はExcelが決めることではない
- 8.関数と演算の順番
- 9.切り上げの反対は切り捨て
- 10.消費税の端数の切り捨て
- 11.動画版はこちら(無料)
1.ROUNDUP関数の挿入
問題
セルA1に123.456と入力した。セルA1の値の小数第1位を切り上げた値をセルB1に求めなさい。
解説
関数の挿入のボタンを押します。
ROUNDUPを探します。このとき、関数の分類を「数学/三角」にすると比較的はやく見つかります。
数値に「A1」と入力すると123.456と表示されます。
桁数に「0」と入力します。計算結果として124と表示されます。
「=ROUNDUP(A1,0)」と入力されます。
123.456は123と124の間の数であり、小数第1位が4なので、四捨五入ならば切り捨てとなりますが、切り上げの場合は、小数第1位がいくつであっても無条件に切り上げます。したがって、124となります。
このように、無条件に端数を切り上げるにはROUNDではなく、ROUNDUP(ラウンドアップ)を使います。
ROUNDUP関数の形はROUND関数と同じです。「UP」がついているだけです。
桁数の考え方はROUNDと同じです。桁数0とは、小数点より右側の桁数を無くすという意味です。
これを「小数点以下切り上げ」または「小数第1位を切り上げ」といいます。
別解
関数の挿入の画面を使わず直接入力することも可能です。「=roundup(」と入力します。
ヒントが表示されますからヒントを見ながら入力します。
数値はセルA1です。桁数は0です。
2.ROUNDUP関数の追加入力
問題
セルA2に123.456と入力した。セルA2の値の1の位を切り上げなさい。
解説
すでに入力されているセルを切り上げるには、ROUNDUP関数の式のうち足りないものを補う入力をしなければなりません。
数値の前に「=roundup(」と入力します。
数値の後にカンマを入力します。さらに桁数を入力します。桁数は-1です。
桁数は小数点の右側に表示させる桁数を表します。
小数点の左側の場合は、小数点から見た位置をマイナスで指定します。1の位を切り上げる場合は-1となります。
3.ROUNDDOWN関数の挿入
問題
セルA1に123.456と入力した。セルA3はセルA1を参照している。セルA3の値の小数第3位を切り捨てた値をセルB3に求めなさい。
解説
関数の挿入のボタンを押します。
ROUNDDOWNを探します。このとき、関数の分類を「数学/三角」にすると比較的はやく見つかります。
数値に「A3」と入力すると123.456と表示されます。
桁数に「2」と入力します。計算結果として123.45と表示されます。
「=ROUNDDOWN(A3,2)」と入力されます。
123.456は123.45と123.46の間の数であり、小数第3位を切り捨てると、小数第3位以下が無くなるので123.45となります。
このとき小数点の右側は2桁となりますので、桁数は2です。
このように、無条件に端数を切り捨てるにはROUNDDOWN(ラウンドダウン)を使います。
ROUNDDOWN関数の形はROUND関数やROUNDUP関数と同じです。「DOWN」がついているだけです。
別解
「=rounddown(」と入力します。
数値はA3です。桁数は2です。
4.ROUNDDOWN関数の追加入力
問題
セルA1に123.456と入力した。セルA4はセルA1を参照している。セルA4の値の小数第1位を切り捨てなさい。
解説
セルを参照する式が既に入力され、先頭にイコールがある場合は、イコールの後にROUNDDOWNを入れます。「rounddown(」と入力します。
最後に「,0)」と入力します。
123となります。
5.ROUNDDOWNとINTの違い
(1)桁数の指定
問題
ROUNDDOWN関数とINT関数を用いて、セルA1に入力した値の小数第2位を切り捨てた値をセルB1に求めなさい。
解説
ROUNDDOWN関数を用いて切り捨てをします。
数値はA1です。小数第2位を切り捨てるので、桁数は1です。
123.4となります。
INT関数は小数点以下を切り捨てる関数です。ROUNDDOWN関数のように桁数の指定はできません。
必ず整数値になります。
INT関数を使う場合はいったん10倍をします。1234.56にしたものを切り捨てます。
1234です。
これを10で割ります。
123.4になります。
整数値にする切り捨てはINT関数のほうが簡単ですが、桁数が0ではない切り捨てはROUNDDOWN関数のほうが簡単です。
(2)マイナスの小数
問題
ROUNDDOWN関数とINT関数を用いて、セルA2に入力した値の小数点以下を切り捨てた値をセルB2に求めなさい。
解説
ROUNDDOWN関数で切り捨てをします。
桁数は0です。
-123となります。
次にINT関数を使います。桁数の指定は不要です。
-124となります。ROUNDDOWNを使うと-123、INT関数を使うと-124になります。
123.456の切り捨てをすると端数の部分が無くなるので、元の値より小さくなります。
これと同じように考えると、-123と-124では-124のほうが小さいので、-123.456の切り捨ては-124となります。
INT関数はこの考え方で、マイナスの小数の場合はそれより小さい整数を返します。
これに対して、ROUNDDOWN関数はプラスの数と同じように単純に小数点以下を無くすので-123となります。
このようにマイナスの小数の端数処理は2つの考え方があり、2つの関数を使い分けなければなりません。
6.関数名、桁数の変更
問題
セルA1の値の小数第3位を切り捨てるところを、誤ってROUNDUP関数を使ってしまったため切り上げになってしまった。これを切り捨てに修正しなさい。また、小数第2位を四捨五入する式に修正しなさい。
解説
小数第2位までの値にするのに、切り上げにするのと切り捨てにするのでは異なる値となります。
ROUND、ROUNDUP、ROUNDDOWNの3つの関数は形が同じなので関数名を変えるだけで切り替えることができます。
UPの部分を消します。
downと入力します。
これで切り捨てになります。
小数第2位を四捨五入にするには、まずDOWNの部分を消します。
小数第2位を四捨五入すると、小数点以下1桁となりますから、桁数を1にします。
7.金額の端数処理はExcelが決めることではない
問題
A列の値段に2%を加算する数式を入力した。この金額を整数値にするため、カンマ桁区切りの表示形式にしてもよいか。
解説
A列の値段を2%増にするので1.02倍をしています。
小数を掛けているので金額が小数になります。
A列とB列を選択します。カンマ桁区切りにします。この操作は間違いです。
カンマ桁区切りのように表示形式で整数値にすると、表示上は四捨五入となりますが、セルに入力されている値は小数のままです。原則として表示形式で小数部分を無くしてはいけません。
表示形式の場合は四捨五入になりますが、整数値にする方法は四捨五入のほか切り上げ、切り捨ても考えられます。
四捨五入か切り上げか切り捨てかの選択はExcelが決めることではありません。どの方法にするかを決定して、関数で端数処理をしなければなりません。
例えば、小数第1位を切り上げるにはROUNDUP関数を使います。
桁数を0にします。
これですべて切り上げになります。
8.関数と演算の順番
問題
子供料金は大人の半額で10円未満を切り上げにしたい。ROUNDUP関数を用いて数式を入力したが切り上げにならなかった。この原因を述べたうえで数式を修正しなさい。
解説
ROUNDUPとかっこはひとかたまりです。この式は切り上げをしてから2で割っています。これは間違いです。
10円未満の端数が発生するのは2で割っているからであり、2で割った数値を切り上げなければ意味がありません。
「/2」を消します。
A2のあとに「/2」を入力します。
9.切り上げの反対は切り捨て
問題
ある店では全品15%OFFセールを行い、1円未満の端数は切り上げとした。
ところが、値引きをする15%分を計算して、元の値段から差し引いたところ金額が合わなかった。この原因を述べたうえで、数式を修正しなさい。
解説
ROUNDUP関数で85%の切り上げになっています。この計算式は正しいです。
次に値引きをする15%分を先に計算します。このときにROUNDUP関数を使ったとします。元の値段の15%です。桁数は0です。
引き算をすると計算が合いません。この計算は間違いです。
値引した後の値段は切り上げなので85%より端数の分だけ多いです。
したがって、値引額は15%より端数の分だけ少なくしなければなりません。
値引後の価格が切り上げならば値引額は切り捨てです。切り上げの計算の反対は切り捨てとなりますので注意が必要です。
ROUNDDOWNに修正します。
これで正しい答えになります。
10.消費税の端数の切り捨て
(1)税込価格と消費税を求める
問題
A列に消費税を加算する前の値段を入力した。B列に10%の消費税額を求めなさい。また、C列に消費税を加算した税込価格を求めなさい。ただし、1円未満を切り捨てるものとする。
解説
消費税が10%の場合、税抜価格の1の位が0でない場合は1円未満の端数が発生します。
この端数について四捨五入、切り上げ、切り捨てのいずれの方法で処理してもかまいませんが、通常は購入者の有利になるように切り捨てにします。
ROUNDDOWN関数を挿入します。10%を掛けます。10で割っても構いません。1円未満を切り捨てて整数値にするので桁数は0です。
消費税額を整数値で求めた場合は、足し算をするだけで税込価格を求めることができます。
別解
税抜価格から直接税込価格を求めることもできます。切り捨てなのでROUNDDOWN関数です。10%を加算するので1.1倍です。桁数は0です。
消費税は税込から税抜を引けばよいです。
(2)税抜価格と消費税額に分ける
問題
C列の税込価格から税抜価格と消費税額を求めなさい。
解説
税込価格から税抜価格を求めるには1.1で割ればよいです。ここで、ROUNDDOWNを使ったとします。税込価格を1.1で割ります。桁数は0です。
これは間違いです。
税抜価格から税込価格を求めるのに切り捨てをしますので、110%より端数の分だけ少なくなります。
逆に、税抜価格に戻すためには、この少なくした端数の分だけ増やさなければなりません。
したがって、消費税込みの価格の端数を切り捨てにする場合、税抜価格を求める計算は切り上げになります。
ROUNDUPにします。
これで正しい答えになります。
消費税は税込から税抜を引けばよいです。
別解
税込価格のうち消費税は110分の10にあたります。
ROUNDDOWN関数です。税込価格に110分の10を掛けます。桁数は0です。
これで消費税額を求めることができます。
税抜価格は切り上げなので端数の分だけ多くなります。したがって、消費税額は10%より端数の分だけ少なくなります。
解説は以上です。
11.動画版はこちら(無料)
この記事は、わえなび実力養成講座「ファンダメンタルExcel」Program 12-15、12-15-2、12-16、12-16-2 のYoutube動画を書き起こして、加筆修正したものです。
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