時間給を計算するときには通常、単位時間あたりの金額に勤務時間を掛けますが、時間がシリアル値で入力されているのか、整数値で入力されているかによって計算の仕方が異なります。
時間のシリアル値が小数であるために誤差が発生しやすいことや、入力ミスや表示のミスが発生しやすいことなどから、本来なら時間のシリアル値を使って計算するのはあまりおすすめしません。しかし、何らかのシステムから取得したデータが時刻形式であることもあったり、シリアル値での計算が避けられないこともあります。
そこで、今回は、時刻のシリアル値を用いたかけ算、シリアル値と時間の換算、時間の合計について出題します。
目次
- 1.時刻のシリアル値(復習)
- 2.時間のかけ算
- 3.時間=シリアル値*24
- 4.単位を揃える
- 5.シリアル値=時間/24
- 6.分=シリアル値*24*60
- 7.シリアル値=分/24/60
- 8.時間差
- 9.時間の合計
1.時刻のシリアル値(復習)
Excelで時刻の計算をするにはまず時刻のシリアル値について理解する必要があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2.時間のかけ算
(1)時間のX倍
問題
1kmあたり平均で4分40秒で走る人が、42.195kmを走るのにかかる時間を求めなさい。
解説
「0:4:40」「42.195」と入力します。1km走るのに4分40秒かかるのであれば、42.195倍をすればいいので、3時間16分55秒となります。
(2)24時間を超えることがある
問題
1kmあたり平均で4分40秒で走る人が、42.195kmを走るのにかかる時間を求めなさい。
解説
「1:25」「25」と入力します。1時間15分を25倍します。11:25となりますが、1時間を25倍しているのに11時間というのは間違いです。
24時間を超えるのは明らかです。「d」で日数を表示するか、[h]を使います。原則として、時間を合計したり、掛け算したりして大きい時間になりそうな場合、あらかじめ表示形式を[h]にしておきます。
3.時間=シリアル値*24
(1)時速
問題
100kmを24時間で走る人の平均時速を求めなさい。
解説
「100」「24」と入力して割り算をします。約4.17km/hとなります。これは正しい計算です。
今度は、「24:0」と入力したとします(表示形式を[h]にしておく)。割り算をすると100になります(表示形式を標準にする)。これは間違いです。
「=100/"24:00"」と入力して計算しても100になります。これも間違いです。24時間のシリアル値は1なので、1で割っているだけです。
シリアル値として入力したものを1時間の単位にするには24倍しなければなりません。
カッコを付けて24倍します(表示形式を標準にする)。
カッコを付けるのが面倒な場合は24で割ればよいです。
(2)単位を時間にする
問題
11:25~23:10は何時間か。
解説
「23:10」「11:25」と入力して引きます。11時間45分となります。
時間の単位で表す場合はシリアル値を24倍します。11.75時間となります。
4.単位を揃える
(1)日給・時給
問題
日給10000円で5日働いたらいくらになるか。また、時給1000円で5時間働いたらいくらになるか。
解説
10000*5をします。Excelで「5」は5日間を表しますが、この場合、シリアル値とは無関係です。
日給は1日あたりの給料であり、単位は[円/日]です。これに日数[日]をかけると約分されて給料[円]が計算できます。単位量あたりの大きさ(日給)が分かっている場合、単位量の単位(日)にあわせて何倍すればいいかを考えます。
時給の場合も同じです。時給は1時間あたりの給料であり、単位は[円/時間]です。これに時間をかけると約分されて給料[円]が計算できます。
したがって、時給に時間をかけて1000*5とするのは正しいです。
しかし、1000*"5:00"は間違いです(表示形式を標準にする)。208.3になってしまいます。時刻を入力したセルに保存されているのはシリアル値です。5時間のシリアル値は0.2083なので、1000*0.2083をしていることになります。
シリアル値は1日を基本単位としているので時給と掛け算しても答えは出ません。
24倍して時間に換算しなければなりません。
1000*"5:00"を24倍すれば5000円になります(表示形式を標準にする)。
(2)単位を時間で揃えること
問題
時給1000円で勤務時間「7」時間「15」分の場合、いくらになるか。また、「7:15」の場合、いくらになるか。
解説
時給に掛け算をするのは「時間」です。したがって、1000*(7+15/60)です。
「7:15」と入力します。時給と掛け算する場合は24倍して、時間に換算しなければなりません。1000*"7:15"*24倍で、7250円となります(表示形式を標準にする)。
5.シリアル値=時間/24
問題
「9:15」と「2.5時間」を加算して、時刻の形式で表示しなさい。
解説
答えを時刻の形式で表すにはシリアル値を求める必要があります。セルに数値を入力した場合、シリアル値ではなく単なる数値です。これをシリアル値にするには24で割ります。
2.5/24を足して、11時45分となります。
6.分=シリアル値*24*60
問題
1分間に40個の製品を作る機械を7時間半稼働したとき、作ることのできる製品の個数を求めなさい。
解説
7時間半を450分と入力した場合は、40*450を計算すればよいです。1分当たりの個数と分を掛けるのは正しいです。
「7」時間「30」分と分けて入力した場合は、時間を60倍して、40*(7*60+30)を計算します。
シリアル値として7:30と入力した場合ですが、1分あたりの個数にシリアル値を掛けてはいけません。
1日=24*60=1440分なので、1440倍しなければなりません。
40個*"7:30"*24*60で18000個です。
7.シリアル値=分/24/60
問題
「9:15」と「4分」を加算しなさい。
解説
"9:15"+"0:04"のようにシリアル値同士を足すのは正しいですが、"9:15"+4は間違いです。4日を足すことになります。
数値で分を入力した場合、1440(=24*60)で割ってシリアル値にします。
シリアル値を時間・分・秒にするにはかけ算をします。逆に、時間・分・秒をシリアル値にするにはわり算をします。
- 時間=シリアル値*24
- 分=シリアル値*24*60
- 秒=シリアル値*24*60*60
- シリアル値=時間/24
- シリアル値=分/24/60
- シリアル値=秒/24/60/60
8.時間差
問題
9時30分に出勤、20時15分に退勤し、その間に60分の休憩時間があった場合、休憩を除く勤務時間は何時間か。
解説
シリアル値で計算する場合、「9:30」「20:15」とすると、1時間を引くので、"20:30"-"9:15"-"1:00"です。
"1:00"は"0:60"でもよいです。9時間45分です。
しかし、1を引くのは間違いです。1時間のシリアル値は「1/24」です(シリアル値=時間/24)。
このシリアル値を時間に換算する場合は、24倍します。9.75時間となります(表示形式を標準にする)。
別解その1
シリアル値を引いて24倍した場合はその時点で時間に換算しているのですから、1時間を引けばよいです。9.75時間となります。
別解その2
「時」と「分」を分けて入力した場合、20時15分と9時半をそれぞれ「分」に直して引き、さらに60分を引くと585分であることが分かります。
分をシリアル値にするには1440で割ります。
これを24倍すると時間になりますが、1440で割った後に60倍するのは無駄な計算です。
ところで、シリアル値は小数ですが、Excelは小数の計算が苦手で誤差が発生しやすいので、できるだけ小数同士の計算が少なくなるように工夫します。したがって、時間と分を分けて入力した場合はできるだけシリアル値に換算せずに済む方法を考えます。
15分と30分をそれぞれ「時間」に直して引き、さらに1時間を引きます。
- =終了時間-開始時間+(終了分-開始分)/60-1
もし、シリアル値にしたい倍は24で割ればよいです。
9.時間の合計
問題
(1)A2:A11の合計を求めなさい。また、時間に換算しなさい。
(2)A2:B11の時間の合計を「時間」単位で求めなさい。
解説
合計はSUMで求めます。
表示形式を[h]:mmにします。89時間24分です。
これはシリアル値なので時間に換算するときは24倍します。89.4時間となります(表示形式を標準にする)。
時間と分を分けて入力した場合は、分けて合計すればよいです。時間の合計+分の合計/60で、時間になります。
解説は以上です。