MOS Excel Expert(上級レベル)に出題される財務関数を覚えるときには、関数名の英語の意味(正式名称)を理解しなければなりません。例えば、FV関数とPV関数の違いを理解するには「F」と「P」の違いを理解しなければなりません。FV関数が理解できれば、PV関数を理解するのは簡単です。
FV関数の「F」とはFuture=未来なので、将来発生するお金を計算します。お金を積み立てたときに、満期になったらどの程度のお金が貯まるのかが気になります。積立の複利計算は関数を使わなくても求めることもできますが、FV関数を使って求めたほうが楽です。そこで、今回はFV関数の練習問題を出題します。
- 現在価値PVと将来価値FVと複利計算の基本的な考え方
- FV関数とは「将来」の積立預金や借入残高を計算する関数である
- PMT関数とは分割払いの1回あたりの支払金額を求める関数である
- 財務関数FV、PMT、NPER、RATE、PVの総復習_上級Expert出題範囲
目次
問題文のあとに簡単な操作方法を解説していますが、静止画では、わかりにくいと思いますので、最後に動画を載せています。ぜひご覧ください。
- 1.将来価値FVと現在価値PVについて(復習)
- 2.FV関数とは何か
- 3.月ごと、半年ごと
- 4.期首払いと期末払いの差
- 5.FV関数応用事例(相対参照)
- 6.FV関数応用事例(絶対参照)
- 7.FV関数応用事例(複合参照)
- 8.FV関数の注意点
- 9.借入残高
- 10.動画版はこちら(無料)
1.将来価値FVと現在価値PVについて(復習)
まず、「将来価値」という言葉について詳しい説明は下記の記事をご覧ください。将来価値FVは、現在価値PV、利率、定期支払額とその支払回数、期首か期末かの5つが決まれば求めることができます。
2.FV関数とは何か
問題
毎年10万円を12年間積み立てたとする。年利6%のとき12年後の受け取り額は何円か。ただし、プラスマイナスに注意すること。
解説
FV関数はFuture Value(フューチャー・バリュー)、つまり将来価値を求める関数です。将来発生するお金を計算する関数であることを理解しなければなりません。
次に、積立預金の基本パターンをおさらいしておきましょう。最初にお金を預け入れるのであれば、それが現在価値PVです。定期的に支払いをする金額が、定期支払額PMTです。そして、最終的に受け取る金額が、将来価値であるFVですが、これを求めるには、FV関数を使います。
FV関数には5つの引数があります。
期間は、年月や経過日数のことではなく、支払回数のことです。何回払いかということです。
現在価値は最初に預け入れる頭金ですが、0円の場合は省略ができます。
「支払期日」とは、期首で積み立てるか、期末で積み立てるかということです。期首なら1、期末なら0です。期末の場合は省略ができます。また、問題文に指定が無ければ期末として扱うという意味なので省略できます。
FV関数を使うときには、現在価値、定期支払額とその回数を考えます。最初に預け入れる金額が無いので現在価値は0円です。定期支払額はマイナス10万円です。支払っているのでマイナスです。
支払回数は12年で12回です。
関数の分類で財務関数を選びます。
FV関数にします。
利率は6%、0.06です。
期間とありますが、年月のことではなく支払回数のことです。したがって、12です。
定期支払額はマイナス10万円です。
現在価値と支払期日を空欄にすると、期末で積み立てた場合の最終的な払戻額、将来価値が出ます。
払い戻しはプラスになります。
期首払いの場合は、支払期日のところに1と入力します。6%だけ多くなります。
3.月ごと、半年ごと
問題
頭金として100万円を預け入れ、期末払いで、以降毎月10万円を1年間積み立てたとする。年利6%のとき満期受取額は何円か。
また、10年間、半年ごとに10万円ずつ積み立てた場合はどうか。
解説
積立預金の受取額は将来価値なのでFV関数を使って求めます。
月単位の積立の場合、利率RATEは6%/12=0.5%です。
期間は支払回数のことなので、1年間なら「12」回払いです。
積立のための定期支払額PMTはマイナス10万円です。
最初に100万円を預け入れているので、現在価値PVはマイナス100万円です。期末払いなので支払期日は省略です。
半年ごとの積立の場合、利率RATEは半分なので6%/2=3%です。
期間は支払回数なので、10年間では20回となります。
4.期首払いと期末払いの差
問題
毎月2万円、年利0.5%で5年間積み立てるとき、期首で積み立てるのと期末で積み立てるのでは元利合計は何円違うか。
解説
元利合計とは元金と利息の合計であり、受け取れる金額の合計のことです。
最初に預け入れる金額の記述がないので、現在価値は0円です(省略可能)。積立のための定期支払額はマイナス2万円です。支払回数は、5年間なら、12*5で60回となります。
FV関数を表示します。毎月の積立の場合、利率は0.5%/12です。支払期日を省略すると期末で積み立てることになります。
期首の場合は支払期日を1にします。
元利合計の差は506円です。
5.FV関数応用事例(相対参照)
問題
次の図で、5年間積み立てたときの元利合計を求めなさい。
解説
積立預金の元利合計を求めるときは、FV関数を使いますが、表の中にデータがある場合はそのセルを参照し、なければ数値を直接入力します。FV関数を表示します。
「月々の積立金額」とあるので月単位の積立です。月単位の積立なので、利率は年利率を12で割ります。
期間は支払回数なので、5年間の12倍で60回です。
定期支払額は30000円ですが、支出なのでマイナスです。
現在価値は最初に預け入れる額ですが、問題文に無ければ0円であり省略可能です。
支払期日は、期首または期末を入力するセルがあるので、それを参照します。これで完成です。
6.FV関数応用事例(絶対参照)
問題
次の図で、積み立てたときの満期受取金額を求めなさい。ただし、セル範囲B7:B12は表示形式が設定されている。
解説
セル範囲B7:B12をみると、データは数値で、表示形式によって「年」が付くように設定されていることが分かります。
これは支払回数で利用します。
FV関数を表示します。ここで下向きにオートフィルをすることに注意しなければなりません。上の3つのデータは絶対参照です。
月単位の積立の場合、利率は年利率を絶対参照にして12で割ります。期間は支払回数なので、年の12倍です。定期支払額は絶対参照です。現在価値は省略です。支払期日は絶対参照にします。
これで完成です。
7.FV関数応用事例(複合参照)
問題
次の図で、期末払いで積み立てたときの満期受取金額を求めなさい。
解説
この表のように縦横にオートフィルする場合、複合参照です。上に入力されているデータは絶対参照、表の項目になっているものは複合参照にします。
FV関数を表示します。月単位の積立なので、利率は年利率を複合参照にして12で割ります。期間は支払回数です。絶対参照です。定期支払額は複合参照です。現在価値は省略です。また、期末払いなので支払期日も省略できます。
これで完成です。
8.FV関数の注意点
問題
次の図で、満期後の積立額を求めなさい。ただし、セルC6が「期首」の場合は期首払い、それ以外は期末払いを指定したものとする。
解説
(1)利率がパーセントになっていない
FV関数を表示します。利率は月単位ですから、12で割りますがこれは間違いです。
セルにパーセントが入力されていれば、100分の1を計算した値が保存されています。
セルにパーセントがない場合は、100で割る必要があります。4.2ではなく0.042です。
したがって、4.2を100で割り、さらに12で割ります。
期間は支払回数です。8年の12倍で96回払いです。
(2)支払いがマイナスになっていない
定期支払額は3万円ですが、支払なのでマイナスにしなければなりません。また、現在価値は頭金の100万円ですが、これも支払なのでマイナスにしなければなりません。
支払金額がプラスで入力されている場合もありますが、FV関数を使うときに、定期支払額や現在価値が支払の場合はマイナスにしなければなりません。先頭にマイナスを付けて符号を反転させます。
(3)「期首」「期末」が文字列になっている
支払方法ですが、期首と期末が選択できるようになっています(入力規則)。
期首、期末が文字列として入力されているときは、比較演算子またはIF関数で1と0に変換します。
C6="期首"とすれば、期首の時はTRUEで1、期末の時はFALSEで0となります。
IF関数を使っても構いません。
9.借入残高
問題
100万円の借入金を次の図の計画で期末払いで返済した場合、3年後の借入残高はいくらになっているか。
解説
まず、借り入れと返済のパターンを見てみましょう。現在価値は借り入れた金額のことです。収入なのでプラスです。ただし、最初に頭金としていくらか支払った場合はその金額を差し引きます。その後定期的に一定の金額で返済します。定期支払額は支払なのでマイナスです。
通常、借金を完済するために分割払いにするので将来価値は0円になりますが、残価設定型ローンのように分割払いをした後で借入残高を残す場合は、最後に残った借入金を一括返済することになります(自動車の場合は一括返済の代わりに車を返却する)。この金額は支出になりますのでマイナスです。これによって借り入れた金額を返済します。
FV関数には5つの引数があります。借入の場合、定期支払額と現在価値は次のように解釈します。
定期支払額は、毎回返済するために支払う金額のことです。支払なのでマイナスです。
現在価値は、借入の場合は最初に借り入れたお金のことです。収入なのでプラスです。ただし、定期的に返済するお金の他に最初に支払う頭金があったらそれを差し引きます。
これによって算出される将来価値とは、残っている借入金のことです。借入残高は定期的な支払いを終えた後に残る金額のことなので、将来価値です。
FV関数を表示します。月単位の返済なので、利率は年利率0.06を12で割ります。期間は支払回数なので、3年の12倍です。定期支払額は2万円ですが、支払なのでマイナスにします。現在価値は借入金のことなので100万円です。借入金は収入なのでプラスです。ただし、最初に5万円だけ頭金として支払っているので、これを差し引いて95万にします。また、期末払いなので支払期日は省略できます。
これで完成です。マイナス35万円ということで最後に35万円を支払わなければならないということです。
ちなみに、この答えは支払金額なのでマイナスで表示されるのが正しいのですが、あえてプラスで表示したい場合は、数式の先頭にマイナスを付けます。
解説は以上です。借りすぎに注意しましょう。収入と支出のバランスを大切に。契約内容をご確認のうえ無理のない返済計画を。
10.動画版はこちら(無料)
この記事は、わえなび実力養成講座「Excel関数スタンダード演習」Program 1-4、1-5、1-5-2 の3本のYoutube動画を書き起こしたものです。
- Excel関数スタンダード演習1財務関数 1-4 FV関数の基本【わえなび】 - YouTube
- Excel関数スタンダード演習1財務関数 1-5 FV関数応用事例演習【わえなび】 - YouTube
- Excel関数スタンダード演習1財務関数 1-5-2 補講 FV関数(借入残高)【わえなび】 - YouTube
また、PV関数、PMT関数などの説明はこちらの動画をご覧ください。
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Excel関数スタンダード演習1財務関数【わえなび】 - YouTube
https://www.youtube.com/playlist?list=PLRaY8kd5CoxPXhaB5Opsj5IRMaXk2kV4z
- 現在価値PVと将来価値FVと複利計算の基本的な考え方
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- キューブ関数はこちら→キューブ関数とは何か、CUBE関数の使い方をわかりやすく解説します