Wordにワードアートの機能が搭載されて20年以上になりますが、今では「ワードアート=ダサい」というイメージが定着してしまいました。ものすごく残念で仕方がありません。美しい日本語をぐにゃぐにゃに曲げて、美観を汚している町内会のポスターを見ると、何が面白いのかと呆れてしまいます。
実は、ダサいかダサくないかという問題ではありません。不快感を与えているかどうかということです。「変形した文字がどのような印象を与えるか」をしっかりと理解すれば、デザインのセンスが無くても(ダサくても)正しいワードアートになります。
そこで、今回は、ワードアートの変形の理論と、文字が相手に与える印象について出題します。
※これはイメージです
目次
問題文のあとに簡単な操作方法を解説していますが、静止画では、わかりにくいと思いますので、最後に動画を載せています。ぜひご覧ください。
- 1.日本語は変形に適していない
- 2.変形には目的がある
- 3.図形に合わせた変形
- 4.間違いだらけのワードアート選び
- 5.不適切な字体が不快感を与えた事例
- 6.サンプルの探し方
- 7.メインではなく「サブタイトル」を変形せよ
- 8.メッセージ性のない変形は逆効果になる
- 9.動画版はこちら(無料)
1.日本語は変形に適していない
問題
次の4つのテキストボックスを使って、それぞれいろいろな変形をしなさい。また、4つのなかで最も変形に適している文字列はどれか述べなさい。
解説
テキストボックスを4つ選択します。
変形の中から、適当に選んで変形します。
これは、アルファベットの文字列「LOWPRICE」について、36通りの変形をするとどのような形になるかを表しています。
ひらがなにするとこのようになります。
カタカナにするとこのようになります。
漢字にするとこのようになります。
ところで、四角や丸などの記号を変形するといろいろな図形をかくことができます。このような記号は最も変形に適した文字列といえます。
ワードアートで図形を描く方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
記号でない普通の文字の場合も、直線的で丸や四角などの記号に近いものが、より、変形に適しているといえます。
この中で記号に近いのはアルファベットです。アルファベットはほとんどの変形に適していて、映画のタイトルやロゴ、ポスターなどにも、図形と同じように使われます。
漢字は画数が多く直線的な変形には向いていますが、曲線的な、文字を曲げるような変形は向いていません。
さきほどの例では半分ぐらいの変形が使えそうです。
ひらがなやカタカナは曲線が多く、元から曲がっている文字なので、変形をしてさらに曲げたとしても、視覚的に何の効果もありません。基本的にすべての変形に向いていません。
2.変形には目的がある
文字を変形するのは何らかの目的があります。例えば、デザインの一部として変形したり、図形に合わせて文字を変形したりすることがあります。ロゴマークの場合、文字を変形させることによってイメージやメッセージを表現する場合があります。
3.図形に合わせた変形
(1)図形に合わせる場合は日本語を変形しても構わない
原則として日本語の文字は変形しないほうが良いです。ただし、多少見にくくなってもかまわない部分や、図形の一部として使う程度であれば差し支えありません。
また、図形に合わせて文字列を曲げることがありますが、本来ならば曲げる必要のない文字列を曲げているので、読みにくくなることに注意します。
(2)図形の大きさに合わせる
問題
次のような赤色の円がある。円の中に文字を入れなさい。
解説
縦書きのテキストボックスを挿入します
図形の塗りつぶしと枠線をなしにします。
文字入力します。改行の記号を選択して1ポイントにします(Wordのみ)。
文字を赤色にします。フォントを変えます。
変形で四角にします。
位置を合わせて完成です。このように、図形に合わせて変形することがあります。
(3)図形の線に合わせる
問題
次のような円とテキストボックスがある。
次のように円に沿って外側に文字を入れなさい。また、内側に文字を入れなさい。
解説
変形の中から下アーチ(下ワープ)を選びます。
変形のハンドルを動かしながら、位置を調節します。
これで完成です。
コピーします。
上アーチ(アーチワープ)を選びます。
変形のハンドルを動かしながら、位置を調節します。
4.間違いだらけのワードアート選び
(1)テンプレートを使ってはいけない
問題
イベント開催を知らせるための文書を作成して、次のようなタイトルを挿入した。ワードアートの使い方としての誤りを指摘して修正しなさい。
解説
これは、あらかじめ用意されているワードアートのデザインをそのまま使っている例です。
本来、文書のタイトルは、文書全体のバランスとイメージ、そして、伝える内容に応じてデザインされるものです。何も考えずに、初めから用意されているものを使うのは間違いです。タイトルにこのような文字を使ってしまうと、全く中身が期待できない「低レベルな内容」という誤解を与えてしまいます。
間違えてワードアートを挿入してしまったときは、その直後に、書式のクリアをして文字効果をすべて取り除きます。
この状態から作り直します。
これが修正をした例です。センスのいい人ならもっとクールなデザインのポスターが作れるかもしれませんが、時間がない場合やデザインが思いつかない場合は、白抜き文字または袋文字にする程度にとどめておけばよいです。下手に文字を強調しようとせず、周りにイラストや飾りを入れて補うようにします。
(2)色を増やしてはいけない
問題
町内会で情報を共有するための文書で、次のようなタイトルや見出しを作成した。ワードアートの使い方としての誤りを指摘して修正しなさい。
解説
たくさんの色を使った結果、バラバラなデザインになってしまっています。このような町内会だよりを受け取ったら、町内の人たちがどのような気分になるのかを全く考えていません。
例えば、街中の看板や標識が気持ち悪い色づかいだったら、どのように感じるでしょうか?たいていの人が不快に感じます。
たくさんの色を使うデザインを「多色配色」といいますが、これを使うには専門的な知識が必要です。素人が多色配色をするとろくなことがありません。
色が多すぎるタイトルは間違いです。このような色使いは多くの人に配布する文書として不適切です。
タイトルはできるだけ色を減らします。これが修正をした例です。原則として、通常のタイトルの場合は色の数を減らします。1色にして周りに飾りを入れるか、白抜きでも十分です。
また、テーマカラーを決めて(秋ならブラウン)、それに合わせて文書全体も色の数を減らします。また、色が少なすぎて寂しいという場合は、イラストや飾りを入れて補います。
(3)真面目な内容で文字効果を使ってはいけない
問題
アンケートのタイトルに袋文字を使用した。ワードアートの使い方としての誤りを指摘して修正しなさい。
解説
まじめなアンケートの内容なのに、タイトルだけ異様に目立っています。
本文がまじめな内容であれば、タイトルを強調するのは不自然です。記入用紙やレポートのように相手に読んでもらう文書に文字効果を使ってはいけません。
これが修正をした例です。テキストボックス(ワードアート)を使用する必要もありません。
5.不適切な字体が不快感を与えた事例
問題
裁判所の前で次のような幕を掲げたところ、不適切であるとの指摘を受けた。どのように修正すべきか述べなさい。
解説
この問題は実際に起こった事件をもとに作成しました(2014年大飯原発訴訟ポップ体使用事件)。長い年月をかけて争い、画期的な判決を勝ち取ったにもかかわらず、勝訴した原告の一部が不適切な垂れ幕を掲げたため失笑されたという残念な事例です。多くの人々の協力があって得られた貴重な結果なのにすべてが台無しになってしまいました(しかも控訴審で逆転敗訴)。
テキストボックスを選択します。フォントがPOP体になっています。このフォントの使い方は間違いです。
フォントを変えます。また、文字間隔が広すぎる場合は、狭くしてもかまいません。
POP体は賑やかなイベントや商品の売り出しの時など限定的に使用されるべきものであり、公式な場でPOP体を使用することは絶対に許されません。また、内容によっては、冗談半分で作っている印象、または他人を挑発・侮辱するような不快感を与えますので注意が必要です。
真剣に、まじめな内容を表現したいのであれば、真面目なフォントを使うべきです。
相手に何らかのメッセージを伝えるときに緊張感のないPOP体を使ってはいけません。
6.サンプルの探し方
問題
テキストボックス(ワードアート)を用いたタイトルを、たくさん作って練習しようとしている。練習の手本となるデザインを探す方法を述べなさい。
解説
市販のテキストやパソコン教室では、テキストボックスを用いたチラシやポスターの作成例が紹介されていますが、不適切な例が多く、安易に信用してはいけません。
特に、色づかいやフォント、変形の使い方が不適切なものが多く、このようなサンプルは全く参考になりません。
例えば、「ポスター テンプレート」で画像の検索をすると、ポスターの作成例がたくさん出てきます。テキストボックスを用いたタイトルを作るときは、プロが作ったと思われるポスターで、マネができそうなものを参考にします。
7.メインではなく「サブタイトル」を変形せよ
問題
テキストボックス(ワードアート)を用いて、次のようなタイトルを作成した。誤りを指摘したうえで修正しなさい。
解説
ポップ体は、商品を紹介するときに使うもので、メインタイトルや文章に使うのは不適切です。
フォントをポップ体でないものに変更します。
原則として必要のない変形をしてはいけません。特に、日本語の文字を意味もなく曲げてはいけません。
メインタイトルを変形する場合は、できるだけ直線的な変形を選びます。傾きを直します。
同じ色の輪郭をつけます。
メインタイトルで太い文字を使いたい場合であっても、初めから太いフォントだけを選ぼうと考えてはいけません。このように細いフォントを選んでも輪郭で太さを調節すれば太くすることができます。また、輪郭の角(結合点)を丸くして丸みのある文字に変えることも可能です。
文字を曲げる場合は、原則として重要でないものに限ります。例えば、メインタイトルとサブタイトルがある場合、メインタイトルを曲げるのではなく、サブタイトルを曲げます。
変形の枠線に合わせて配置(アーチ)にします。
位置を調節します。
8.メッセージ性のない変形は逆効果になる
問題
次のような意味不明な変形をしているタイトルがある。変形をなくしなさい。
また、次のように変形しなさい。
解説
いったん、変形の「四角」を選んで、意味不明な変形をなくします。
下手な変形をするくらいなら、変形しない方がましです。
日本語のタイトルを作るときは、このような意味不明な変形をしてはいけません。下品なインパクトは逆効果です。
変形の中から波形(大波)を選びます。
明朝体にします。
変形のハンドルで微調整します。
3D回転をします。
回転しながら位置を調節します。これで完成です。
それぞれの変形にはそれぞれの意味があり、その形の持つイメージを利用してメッセージを伝えるために変形をします。
例えば、波形の変形は、おもに、流れるイメージや浮遊しているイメージのタイトルに限って使うことができます。この場合、フォントの種類や大きさ、回転などもあわせて、そのイメージを表現しなければなりません。
解説は以上です。
9.動画版はこちら(無料)
この記事は、わえなび実力養成講座「Word新演習2」Program 2-17、2-18、2-20 の3本のYoutube動画を書き起こして、加筆修正したものです。
- Word新演習2・テキストボックスの正しい使い方 2-17 変形と回転4(文字列の変形)
- Word新演習2・テキストボックスの正しい使い方 2-18 正しいタイトルの作り方1(文字が与える印象)
- Word新演習2・テキストボックスの正しい使い方 2-20 正しいタイトルの作り方3(無意味な変形をしてはいけない)
ちなみに、テキストボックスとワードアートの動画は全部で26本あります。
すべて無料公開しています。ぜひご覧ください。
Word新演習2・テキストボックスの正しい使い方 - YouTube
https://www.youtube.com/playlist?list=PLRaY8kd5CoxM67TScBd319k0yhLzMsX3d